2010年5月2日日曜日

チャンスかも

私立歯科大学定員割れ
( 2010年04月27日 15:16 キャリアブレイン より引用)
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 昨春に大幅な定員割れを起こした私立歯科大・歯学部で、今春も全国17校のうち11校の入学者が定員を満たさず、定員割れが拡大していることが、「日本私立歯科大学協会」のまとめでわかった。

  このうち、奥羽大歯学部の入学者数は定員の3分の1の32人で、松本歯科大、北海道医療大歯学部とともに欠員率が5割以上。昨春の場合、定員割れしても5校が欠員率1割以下だったが、今春は11校すべてで欠員率が1割を超え、2割以上も9校を数えた。定員割れで、高額の学費を見込めず、学校経営には大きな打撃となる。また、質的に一定レベルの学生を確保できないおそれもある。
受験者減には、歯科診療所の過当競争で、「歯科医師は高収入」といったかつてのイメージが崩れていることなどが背景にある。
 文部科学省は「教育の質を確保するべく、これを契機にさらに入学定員の適正化を働きかけていきたい」(医学教育課)としている。
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経済的な観点からの問題もあり
国家試験の合格率の操作もあり・・・・複雑みたいですねぇ・・・・

ふた昔前(十年ひと昔として二十年前・・・
ドッグイヤーで一年=七年換算だと140年前!!!?)には
「医者は余るから医学部定員を絞れ!!」の掛け声だったのですがねぇ・・・
今になって足りないの医療崩壊の過労のなんのと
振り回される方はたまったモンじゃあありません。
社会的背景、身体感覚の認識の変化が
大きすぎた要素もあるのですが・・・・

私立歯科大学だと
投資=学費の高額さがネックになるのでしょうが
10年20年後には歯科医師僅少価値が・・・・
と考えると今がチャンスなのかな?
社会的インフラとして歯医者さんを保護して欲しいものです。
虫歯の痛みはたまったものではありませんし。

10年20年後に
「・・・・む、虫歯が痛んで・・・!!」
歯科医院に駆け込んでも
「はい、予約は1週間後になります」
ひぇー!!
みたいな事態になりませんように。

フグ中毒・その3

(ひつこいけれども続き)

外病院の当直が明けて朝・・・

医者は基本、当直明けの休みはありません。
明けてそのまま通常勤務に就くのです。
病院を移動する間の時間をぬって
高次救急に送り込んだ「フグ中毒患者」の見舞いです。
・・・気になりますしねぇ・・・

「よっ、昨日は大変だったなぁ!」
受け入れてくれた指導医先生が医局で出迎えてくれました。
「バイタル安定しているしだんだん毒が抜けて
意識も出てきているしなぁ・・・」
そりゃあよかった。
「ただなぁ・・・フグ中毒で肺水腫になるのかとなぁ・・・」
「はぁ?」
「いやなぁ・・・あの患者、結構、気管チューブから
泡沫状の血性分泌物が出るんよ・・・
フグ毒で気道損傷や肺水腫になるのかと
研修医どもがずっと騒いでいてなぁ・・・」
「・・・・あのぉ・・・すみません・・・・
それって多分、私が挿管しようとした時につけた傷が原因ですわ」
「・・・・(指導医・ちょっと白い目線)・・・・」
「おっさん、パニック起こしてあばれよったんですよぉ・・・!」
分かった分かった、無理もないよなぁ、とうなづく指導医。
「まぁ、なかなか当たる事も少ない症例だったし
なんとかなりそうだしよかったじゃん・・・」
と会話をしているのは医局の片隅のちっちゃなキッチン。
指導医先生、さっきからそこで「鍋」をこしらえているのです。

医者の現場、特に救急医療では
いつ何が起こるかわからない。
併設キッチンで何かこしらえて食べられる時にかっ込むのが原則。

で、指導医先生、研修医の朝ごはんの面倒まで見るつもりらしく
大きな鍋で丹念に出汁をとってあれこれ具材をほおり込む。
「あんたも朝ごはんまだやろ?食って行ったら?」
「何の鍋っすか?」
指導医先生、ニヤリと笑って
「フグ鍋だよ!!」
すーっ・・・と血の気が引く私・・・

「あの患者の奥さんが付いてきていただろ?
食べ残しのフグの身をビニールに入れて持ってきていたのさぁ!」
・・・・そう言われればあの怒涛の処置中に
患者の横に年配の女の人がすがり付いていて
ビニール袋を差し出して
「これ!これを食べてしばらくしてから
”唇がしびれる・・・!”と言っておかしくなり始めたんです!!」
と泣き叫んでいた記憶が・・・・

「それそれ!そのフグの身の鍋だよ!!」

無言で後ずさりして逃げかける私。

「冗談だってば!タラ鍋さ!」

・・・冗談にも程がありすぎ。
タラ鍋だかフグ鍋だかを辞退して逃げ帰りました。

フグ毒は呼吸筋麻痺の時期さえクリアーできれば
特に後遺症は残さずに回復すると言われています。
その漁師のおっさんも後日、無事退院したと聞きました。
ただ、その後も漁師を続けたのか
そして自分で採ったフグを味噌汁にして食うのは止めたのか
そこの処は分かりません。

なんとかクリアーしたとは言え
とんでもない目に遭いました。
興奮のあまり、同級生や同僚に
「当直していたらフグ中毒が来てん!!」
と喋り・訴えまくったところ、10人中10人が同じ答を返してきた。
「ふーん・・・で、土に穴掘って埋めたんか?」

・・・・えっ?・・・・

古くからの民間伝承で
フグに当たったときは地面に穴を掘って体ごと埋めると
毒が抜ける・・・と言われているらしい・・・なんですか・・・?
とある有名な映画でもそんなシーンがあったとかで
「その当直病院の裏庭に穴掘ってちゃんと埋めたか?」
と本当に10人中10人が異口同音に返してきたので
こっちがびっくりした。
「そんなんで治るかぁぁ!!」

「とりあえず土に埋めておけば毒が抜けるのかも」
「自然回復力に期待」
「どうせ助からないと諦めて埋葬ついでに穴掘って頭まで土かけるんと
ちがうかぁ?手間はぶくんや」
・・・・お医者さん・・・しっかりしてくださいよぉ・・・・
どっと疲れが出てしばらくは立ち直れませんでした・・・・

2010年4月28日水曜日

フグ中毒・その2

(続き)
運び込まれた60がらみのおっちゃんは「漁師さん」
都市部の工業都市A市ですが海に面する地区があり
あの当時はまだかろうじて「漁師さん」がいた。
で、そのおっちゃんが自分でフグを釣って
「いつもやっているように」自分でさばいて
味噌汁に入れて食べながら仕事上がりの一杯をひっかけていたら・・・
しびれてきた。

もちろん「しびれた」だけですむ場合もありますが
このケースでは呼吸筋麻痺が急速に来ている。
とにかく気管内挿管をしないとまずいです。
ところが・・・フグ毒のやっかいなところは・・・
「筋肉の麻痺は進行するが意識ははっきりしている」
のです。
中枢神経への直接の抑制はあまり生じません。
つまりどう言うことかと言うと・・・
「意識ははっきりしているのにだんだん呼吸が止まっていくのが自分で分かる」
のです。
・・・・恐怖ですね・・・

そんな状態なのでおっちゃんパニック!
気管内にチューブを挿入するやり方は2通りありますが
どっちにしろ仰向けにして頭や首をしかるべき位置に据えないと出来ない。
パニックになったおっちゃんはストレッチャーの上で暴れまくる。
医療スタッフに事務当直の人にまで応援してもらっても抑えられない。
気道確保どころか末梢静脈の点滴を入れる事も出来ない壮絶な暴れ方。
まぁ・・・息が出来なくなるのが分かるのだから無理もありませんが・・・

こっちがどたばたしているうちに救急隊はしゅっ、と撤収していた。
・・・・
この隊には後日、別件でヤラレる事になるのです・・・

格闘約十分。
全員がへとへとになり何となく申し合わせたように顔を見合わせました。
「・・・・もう少し大人しくなるまで待とう・・・・」
暴れると言う事はまだ運動筋が完全には麻痺していないと言う事です。
完全に麻痺が進行すれば呼吸も止まりますが暴れなくなります。
全身麻酔がかかったのと同じ状態になるわけです。
おっちゃんはなぜかうつぶせになりたがる。
その方が彼にとってまだラクな姿勢なのでしょう。
そのままの状態で待ちます。
だんだんおっちゃんの動きが止まってきて喚き声も消えてきました。
・・・・静かになった・・・
「今だっっ!!」
えいやっ!と仰向けにひっくり返します。全身の筋力がなくなり
首とあごがぐらんぐらんになっています。いい感じ。
口を開かせスタイレットと言う器具を使いながら器官チューブを入れます。
麻酔がかかったのと同じ状態ですから今度は上手くいきました。
とりあえずアンビューバックで手動の呼吸補助を入れながら
骨董品の人工呼吸器につなぎ変えます。
教科書の「人工呼吸器の歴史」の項目に
モノクロ写真で掲載されているのでは、と危ぶむくらいの骨董呼吸器ですが
がっちゃんがっちゃんぶーぶーと音を立てながらも仕事はしてくれている様子。
その証拠に心拍・血圧は安定している。よしよし。
汗をぬぐいながら(主に冷や汗)転送先を探しにかかります。

意識が残っている状態での気管内挿管はもちろん難しいです。
結構太いチューブを鼻やら口から押し込まれるのですから
抵抗がありますし、咽頭部のいろいろな反射に妨害されます。
このおっちゃんが暴れているうちに挿管するのはどだい無理な話だったのですが
だからと言って、呼吸停止に至るまでじっと見て待つのも根性が要りました。
結果オーライだけれども挿管できなかったらどうなっていたやら。
「こっちがパニックもんだよ・・・」
ぶつぶつぼやきながら電話をかけます。

その当時は大学病院の3次救急とつながりがあったので
そこの当直指導医に泣きつきました。
「フグ中毒患者でして・・・」と電話で言うと
「・・・え゛っっ!!?・・・」と引き気味。
もう挿管してありますしバイタル安定しているのでお願いしますと言うと
とにかく連れて来なさい、と言う事になりました。
事例が事例なので別の救急車を呼んで付き添って大学病院まで搬送しました。
到着するとスタッフが大勢出てきててきぱきとおっちゃんを運び込んで
最新の呼吸器につないでくれます。
研修医たちは「フグ中毒」と言う珍しいケースに遭遇してちょっとうれしそう。
張り切って立ち回ります。
・・・・結果論かも知れないけれども・・・
こういう設備・人材の整った施設に始めから連れて行けっていっただろぉぉ!
あの救急隊リーダーの顔を空に思い浮かべながら無言で絶叫する私。

救急車で当直病院につれて帰ってもらいました。
その後の記憶が無いのですが
多分、その後は大した外来患者も来ず
病棟も安定していたのだと思います。
助かった・・・・

2010年4月27日火曜日

フグ中毒・その1

毒があると分かっていても、いや、だからこそ
「フグを食べたい!」と言う欲望は
古来から日本人のDNAに脈々と受け継がれているようで
毎年どこかで「フグ中毒」は発生します。

ちゃんと毒の部分を除去すれば問題は無いのですが
「この痺れるのがいいんだ」
と通ぶって危険部位を食べてお亡くなりになる方とか
食べるほうも出すほうも「毒があるなんて知らなかった」
と言うちょっと信じられないケースとかいろいろ。

昔の話です。

工業地帯の某A市の某外科系病院。
大層、環境がナニな地区で
やってくる患者も患者
受ける方も野戦病院状態。
そんなところで週末一人当直をしていた私・・・・
怖いもの知らず+お金ほしさでしたねぇ・・・(遠い目)
貴重な体験もさせてもらいましたが。

病院自体は外科系ですが
外科医はオンコール。
何事もなければ気楽な当直のはずでしたが。
「漁師さんが自分で釣ったフグを食べて痺れています」
救急隊から連絡が入りました。
フグ中毒!!
本での知識はありますが見たこともありませんがな!

フグ毒の成分「テトロドトキシン」は厄介な毒です。
厄介な点はいくつかありますが
なにが一番厄介かと言うと
呼吸筋麻痺に至る場合があることです。
そして解毒剤はありません。
つまり重症の場合は人工呼吸器管理が必要。

「呼吸器管理ができる処に行ってくれ!」
と断ります。
なんたってぼろぼろの野戦病院・・・
酸素だって中央配管ではありません。
「酸素吸入!」
と叫ぶと看護師さんが2人がかりで
身の丈ほどもある巨大酸素ボンベをどこからか
ゴロゴロガラガラ音をたてて引っ張り出してくる施設です。
呼吸器なんて・・・一応はあるのですが
骨董品もの。
そこにフグ中毒なんてとんでもない!!

しかし相手の救急隊が食い下がります。
「いや、ちょっと唇が痺れているだけですから・・・
ちょっと見てもらえればいいんですから・・・」
とひつこい。
そのひつこさに負けて「来て下さい」と言ってしまった私。
どれだけ後悔したか・・・・

後日談になりますが、この時の救急隊のリーダーの
救命救急師が超曲者で
その後、何回か「だまされる」事になります。
10数年経った今でも顔は忘れられません。

病院が搬入を断ってたらい回しのなんのと
昨今、大層な問題になっています。
「めんどくさそう」「しんどいし」
で「満床お断り」にしているケースがあるのも事実。
しかしてなんでもほいほい受けるわけにもいかないのです。

救急隊としてはどこかの病院に押し込んでしまえば仕事終了。
後は病院の責任になるので
病院のレベルとか度外視してなんとか押し込もうと必死です。
病院にいったん収容してしまった後で重症化して
高次病院への転送が必要になっても
その受け入れ先は病院・当直の医者が探して交渉しなければなりません。
ただでさえ受け入れられにくい週末に
当直の医者が必死に電話しまくっても
相手の病院当直医も「はいはい」「でも無理」で断ります。
その間に患者の容態は悪化・・・
死亡したら自分の責任です。
次の転送先を探すのに救急センターは手伝ってくれません。
今時、地域によってはしてくれるのかな?
とにかくその時期はA市でも他の近隣地区でもしてくれませんでした。
「病院間の転送はしますが受け入れ先を探すのはそっちの仕事でしょ!?」
でガチャン。

こうなると運び込まれる医者も警戒心アップ。
ますます受け入れが悪くなる。

そして・・・
ついには「偽装」が始まります・・・・

「ちょっと痺れているだけ」の60才がらみのおっさんを
救急隊が運び込んできました。
見るなり
「なんや!呼吸が止まりかけているやないかぁぁぁ!!!」
私、絶叫。

・・・・・
救急隊が収容した時は「ちょっと痺れているだけ」で
車中でどんどん悪くなったのかもしれません。
どうも他の病院でも断られていた様子だし
その間に容態が変化したとも考えられます。
だけど「呼吸器管理が必要だ」と言う見解を押し切って連れてきて
息、止まりかけじゃん・・・

冗談じゃあない!!
「挿管!!」

気道を確保するために口から気管支にチューブを差し込みます。
そこからが地獄でした・・・・

2010年4月22日木曜日

常套句「心の闇」

「ペット虐待」親たち

(産経新聞 iza! 4/14より引用)
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 厚生労働省によると、年間4万件を超える児童虐待では平成16年以降、心中を除いても毎年50~60人の命が奪われている。中でも、2歳の次女の胸をエアガンで撃つなど、子供を使って遊んでいるとしか受け取れない、常軌を逸した行為が目立ってきた

■「心の闇」解明必要
 精神科医の斎藤学さん(69)は「『しつけをしただけ』と言い張る虐待と、まるでペットを残虐に扱うかのような虐待は異なるもので、一線を画すべきだ。『しつけ虐待』は家族の枠組みの中で起きる一方、家族の枠組みが崩壊したところで起きてしまうのが『ペット虐待』だ」とみる。

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「おいおい、ペットならば虐待していいのかよ!?」
と言う突込みがなされていましたが本当に・・・。
言葉で解説出来ない事例には
「心の闇」と言う常套句を被せてブラックボックスにぽい。
と言いますかちゃんと解説していますよね。
「家族の枠組みが崩壊したところで起きてしまう」と。
要は遺伝子的・戸籍的には親子、家族ではあっても
生物・社会的に家族ではないんでしょう。
要らないんでしょう。
邪魔者はいたぶって殺す。
ある意味、すごく本能的なのかも。

虐待してしまう自分に悩んで医療機関に駆け込む親も居ます。
そんな人はまだ「してはいけないことをしてしまう」と言う自覚がどこかにあるわけです。
「ペット虐待」はそこのところの自覚がゼロみたいですね。
ヒトとして「していいこと」「してはいけないこと」の認識が欠如。
これは戦後社会が「道徳」教育を放棄した・放棄させられた
結果だと思いますね・・・
個々の事例で当事者の心理分析しているだけでは
すまない問題ではないでしょうか。

で。
悩んで医療機関に相談に来る人もいます。
で、医者はどうするかと言うと
「話を聞かない」
この態度に徹します・・・

本人が「私は子供を虐待してしまい自分で自分を止められません!!」
とはっきり訴えていても
「あっ、そう。睡眠薬飲んでぐっすり寝てね」
くらいで追い返します。

児童相談所や警察がからんでくるとややこしいだけですし。
事件として表に出る前には通報・相談するって
どこへどう持っていったらいいかお互い分からないし。
病院としては「かっかしているんでしょ、寝ておきなさい」
くらいしか言えないのも事実なのですが。

以前、勤務していた某医療機関で
あまりにも深刻な感じの人が相談に来ました。
私も困って精神科出身の院長に廻したら・・・
「あっ、そう。睡眠薬飲んでぐっすり寝てね」
で10秒で退場させた。
あっ・・・さすがは経営者だな・・・・
と感心しましたね。
「虐待が絡んでいる」「やばそう」「社会的問題になりそう」
→「病院の評判にかかわる!」→「即刻退場!」
ですね。
真剣に受け止めようとした勤務医の私が甘ちゃんなのです。

だから個々の「心の闇」に迫ったところで
解決するわけでもないだろうに・・・と思ってしまいますね。
「くさいものには蓋をしまくる」大人の行動が要求される社会ですから。

社会自体が「闇」ですよね・・・

2010年4月20日火曜日

モンスター・シルバー

「モンスター×××」
こんな言葉が派生し始めたのはいつからでしたっけ?
とにかく一般常識が通じない。
究極のわがまま、ジコチュー。
そして攻撃的。自己主張が強く周囲を振り回して恥じるところが無い。
これまた最近派生している言葉で
「××崩壊」があります。
「モンスター大量発生で日本社会崩壊」
に至っていると思いますね・・・・

で、高齢者も負けてはいない。
キレる老人が社会的に問題視されています。
ただ、そこら辺を指摘すると
「高齢者、老人を馬鹿にするのか!」
「虐待だ!」
とそれこそキレられたりして。堂々巡り。

でも呼ばせて貰います。
「モンスター・シルバー」と。

どこまでが元来のキャラで
どこからが加齢による変化=痴呆・認知症なのか
年齢が上がるとともに分からなくなります。
もっと進むと明らかにアルツハイマー型の
攻撃性の強い状態になって介護者などに危害を加えかねない
状態に移行する場合も多い。

医療や福祉はサービスだ!
自分の思うとおりのサービスをしろ!
と憲兵づくに威嚇する老人。

思いつき、気ままで通所やヘルパー・訪問看護の
予定を変える・断る・すぐ来いと命令を繰り返す老人。

100%自分の思う通りにならないと
外来や病棟、自宅で暴れだす人だって少なくありません。

往診・在宅も常時、そのような困難なケースを
数件かかえています。

ケアマネージャーや施設・ヘルパーの管理者、家人などが
寄り集まって相談会を重ねたりするのですが
なかなか突破出来ない事例も多い。

身寄りが無い、家人にも見放された人は
金銭管理が出来ず
病院側としては未収のまま続行せざるを得ない場合もあります。

都市部だから地方だから、と言う境界が
悪い意味でどんどん無くなって来ています。
地方だと大家族制がまだ残っているので
家庭内での支援が期待できそうに思うのですが
かえって知らぬ存ぜぬノータッチの家庭も。

日本全国、これからますます
身体・メンタル・経済的に支援、処理しきれない
高齢者問題が増え続けるのでしょう。

若者が全員キレるわけではない様に
もちろん高齢者全員が問題なわけではありません。
ただ、現在から今後の日本社会の人口年齢構図の
アンバランスを考えると
暗然とした気持ちになります。

2010年4月19日月曜日

引きこもりの果て

愛知・豊川の家族5人殺傷
(毎日新聞 4/19より抜粋)
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愛知県豊川市の一家5人殺傷事件で、岩瀬高之容疑者(30)=殺人未遂容疑で逮捕=がインターネットを使用する電話回線をいったん家族に止められ、事件2日前の15日に「殺して火をつけてやる」と家族を脅していたことが一家の関係者の話で分かった。
 一家の関係者によると、殺害された岩瀬一美さんの毎月の給料は無職の長男、高之容疑者に管理されていたといい、引きこもり状態だった高之容疑者と家族のいびつな関係が浮かぶ。
次男の会社関係者や親族によると、給料を管理していたのは高之容疑者で、20万~30万円の収入から一美さんに5万円、母正子さん(58)に4万円を毎月渡し、残りを自分で使っていたという。
こうした状態について、次男は会社関係者に「父が兄に強く言えない」と話していた。一美さん自身も親族に「私が言うと(高之容疑者が)怒るんだよ」と困った様子で話していたという。
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しばらくニュースを見ていなかったら
こんな事件が起きていたのですね・・・
少し前に病院内で出くわした事例を思い出しました。

「40過ぎの長男の体調が悪い」
と両親が長男を救急車に乗せてやって来た。
見れば高度の肝不全。
・・・・何年も引きこもり+酒びたりの生活だったそうだ。

搬入された時は直接関わっていなかったのですが
病棟で「意識状態がおかしくなった」と呼ばれたので行ってみました。
腹水で腹は蛙腹。顔色・目つきがもう生きた人間のものではない。
ここに至るまで何年引きこもり生活していた、させていたんだ。
そう思いつつも一通りバイタルチェック。
血圧・呼吸は安定している。
高度の肝不全なので意識状態が不安定なのは仕方なし。
個室に入っていたのでICUに移動させた。
それが大騒動のきっかけになるなんて・・・

状態が不安定な患者を観察・対応しやすくするために
ICU、観察室に置くのは医療サイドとしては当然の処置。
ところが連絡を受けて駆けつけた両親が
「なんで個室に居ないんだ」
「どうして広いところに移したんだ」
と騒ぎ立てる・・・と言うか怯えている。
看護・加療の面からの措置だ、と説明しても
なんだかそわそわびくびくしている両親。
数分後、その訳が判明した。

意識混濁して動く体力も無いと思われていた長男が
突然、目を見開いて大暴れ!
「なんだ!!ここは!!」
「明るいじゃないか!!広いじゃないか!」
「何でこんな管(点滴)が付いているんじゃ!!」
点滴の管は抜くわ立ち上がって暴れるわ・・・
男性看護師が何人も跳ね飛ばされ
一人は逃げ遅れて首を締め上げられる有様。

かなりの量の鎮静剤を打ち込んでようやく少しはおさまったが
こういう強い興奮状態に陥ると
並みの薬量では抑えられません。

この時、両親いわく
「だから個室に入れておいてくれと言ったのに・・・・」

引きこもりを長期間していたため
広い空間、明るい処に居るのが耐えられなかった、と言うわけ。
致し方なく個室に戻ってもらった。

ここまで来ると医療の及ぶ処ではありません。

興奮と意識レベル低下を繰り返して
数日後に死亡しました。
こころなしか両親はほっとしている様にも見えました。

何らかのきっかけで引きこもりになる=社会的に活動する力が無くなる。
これはもちろん大きな問題です。
家庭内でどう対応していいか分からない。
本人の要求通りにしないと暴れる、危害を加えられる。
叱れない、是正できない。

豊川の事件では父親の給料を長男が握って
ネットで買い物三昧。
ネットを切られると暴れた・・・
なんで無職の長男に家計を抑えられるのかなぁ、と思いますが
暴力が激しくて致し方なし、だったのでしょうか。
やはりわが子が不憫でかわいそうだから
暴れられるよりはお金をあげてしまっていたのでしょうか。

私が出くわした例も同類のパターンです。
なんで無職で家から一歩も出ない・出られない人が
肝不全になるまで酒を飲み続けられるのですか?
「暴れるから」と両親がせっせと買って与えていたからです。

この様な構図の果てに病気で自分が死ぬのは
まだしも穏便な結末だったと思います。
家人を殺傷したり
もう少し外に出られる人だったら
通り魔的な事件を起こすとか
別の結末を迎える事例は多いはずです。

社会と自分、家族と自分の関係を良好に保つのは
いつの時代、どこでも難しいものです。
妥協しすぎると相手がエスカレートする。
抑えすぎると反発を招く。

・・・・・
病院での例は両親は特に何も言わずに帰って行きました。
後日談があります。
どうやら弟が居てその弟も引きこもり傾向らしく
「ネットで調べたら兄に与えられた医療行為は
間違いなのが分かったから訴訟の準備をする」
とか言っているとか言わないとか・・・。
今のところ具体的に何も起きてはいませんが。
両親の苦労は終わったわけではなさそうです。