2010年5月2日日曜日

チャンスかも

私立歯科大学定員割れ
( 2010年04月27日 15:16 キャリアブレイン より引用)
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 昨春に大幅な定員割れを起こした私立歯科大・歯学部で、今春も全国17校のうち11校の入学者が定員を満たさず、定員割れが拡大していることが、「日本私立歯科大学協会」のまとめでわかった。

  このうち、奥羽大歯学部の入学者数は定員の3分の1の32人で、松本歯科大、北海道医療大歯学部とともに欠員率が5割以上。昨春の場合、定員割れしても5校が欠員率1割以下だったが、今春は11校すべてで欠員率が1割を超え、2割以上も9校を数えた。定員割れで、高額の学費を見込めず、学校経営には大きな打撃となる。また、質的に一定レベルの学生を確保できないおそれもある。
受験者減には、歯科診療所の過当競争で、「歯科医師は高収入」といったかつてのイメージが崩れていることなどが背景にある。
 文部科学省は「教育の質を確保するべく、これを契機にさらに入学定員の適正化を働きかけていきたい」(医学教育課)としている。
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経済的な観点からの問題もあり
国家試験の合格率の操作もあり・・・・複雑みたいですねぇ・・・・

ふた昔前(十年ひと昔として二十年前・・・
ドッグイヤーで一年=七年換算だと140年前!!!?)には
「医者は余るから医学部定員を絞れ!!」の掛け声だったのですがねぇ・・・
今になって足りないの医療崩壊の過労のなんのと
振り回される方はたまったモンじゃあありません。
社会的背景、身体感覚の認識の変化が
大きすぎた要素もあるのですが・・・・

私立歯科大学だと
投資=学費の高額さがネックになるのでしょうが
10年20年後には歯科医師僅少価値が・・・・
と考えると今がチャンスなのかな?
社会的インフラとして歯医者さんを保護して欲しいものです。
虫歯の痛みはたまったものではありませんし。

10年20年後に
「・・・・む、虫歯が痛んで・・・!!」
歯科医院に駆け込んでも
「はい、予約は1週間後になります」
ひぇー!!
みたいな事態になりませんように。

フグ中毒・その3

(ひつこいけれども続き)

外病院の当直が明けて朝・・・

医者は基本、当直明けの休みはありません。
明けてそのまま通常勤務に就くのです。
病院を移動する間の時間をぬって
高次救急に送り込んだ「フグ中毒患者」の見舞いです。
・・・気になりますしねぇ・・・

「よっ、昨日は大変だったなぁ!」
受け入れてくれた指導医先生が医局で出迎えてくれました。
「バイタル安定しているしだんだん毒が抜けて
意識も出てきているしなぁ・・・」
そりゃあよかった。
「ただなぁ・・・フグ中毒で肺水腫になるのかとなぁ・・・」
「はぁ?」
「いやなぁ・・・あの患者、結構、気管チューブから
泡沫状の血性分泌物が出るんよ・・・
フグ毒で気道損傷や肺水腫になるのかと
研修医どもがずっと騒いでいてなぁ・・・」
「・・・・あのぉ・・・すみません・・・・
それって多分、私が挿管しようとした時につけた傷が原因ですわ」
「・・・・(指導医・ちょっと白い目線)・・・・」
「おっさん、パニック起こしてあばれよったんですよぉ・・・!」
分かった分かった、無理もないよなぁ、とうなづく指導医。
「まぁ、なかなか当たる事も少ない症例だったし
なんとかなりそうだしよかったじゃん・・・」
と会話をしているのは医局の片隅のちっちゃなキッチン。
指導医先生、さっきからそこで「鍋」をこしらえているのです。

医者の現場、特に救急医療では
いつ何が起こるかわからない。
併設キッチンで何かこしらえて食べられる時にかっ込むのが原則。

で、指導医先生、研修医の朝ごはんの面倒まで見るつもりらしく
大きな鍋で丹念に出汁をとってあれこれ具材をほおり込む。
「あんたも朝ごはんまだやろ?食って行ったら?」
「何の鍋っすか?」
指導医先生、ニヤリと笑って
「フグ鍋だよ!!」
すーっ・・・と血の気が引く私・・・

「あの患者の奥さんが付いてきていただろ?
食べ残しのフグの身をビニールに入れて持ってきていたのさぁ!」
・・・・そう言われればあの怒涛の処置中に
患者の横に年配の女の人がすがり付いていて
ビニール袋を差し出して
「これ!これを食べてしばらくしてから
”唇がしびれる・・・!”と言っておかしくなり始めたんです!!」
と泣き叫んでいた記憶が・・・・

「それそれ!そのフグの身の鍋だよ!!」

無言で後ずさりして逃げかける私。

「冗談だってば!タラ鍋さ!」

・・・冗談にも程がありすぎ。
タラ鍋だかフグ鍋だかを辞退して逃げ帰りました。

フグ毒は呼吸筋麻痺の時期さえクリアーできれば
特に後遺症は残さずに回復すると言われています。
その漁師のおっさんも後日、無事退院したと聞きました。
ただ、その後も漁師を続けたのか
そして自分で採ったフグを味噌汁にして食うのは止めたのか
そこの処は分かりません。

なんとかクリアーしたとは言え
とんでもない目に遭いました。
興奮のあまり、同級生や同僚に
「当直していたらフグ中毒が来てん!!」
と喋り・訴えまくったところ、10人中10人が同じ答を返してきた。
「ふーん・・・で、土に穴掘って埋めたんか?」

・・・・えっ?・・・・

古くからの民間伝承で
フグに当たったときは地面に穴を掘って体ごと埋めると
毒が抜ける・・・と言われているらしい・・・なんですか・・・?
とある有名な映画でもそんなシーンがあったとかで
「その当直病院の裏庭に穴掘ってちゃんと埋めたか?」
と本当に10人中10人が異口同音に返してきたので
こっちがびっくりした。
「そんなんで治るかぁぁ!!」

「とりあえず土に埋めておけば毒が抜けるのかも」
「自然回復力に期待」
「どうせ助からないと諦めて埋葬ついでに穴掘って頭まで土かけるんと
ちがうかぁ?手間はぶくんや」
・・・・お医者さん・・・しっかりしてくださいよぉ・・・・
どっと疲れが出てしばらくは立ち直れませんでした・・・・

2010年4月28日水曜日

フグ中毒・その2

(続き)
運び込まれた60がらみのおっちゃんは「漁師さん」
都市部の工業都市A市ですが海に面する地区があり
あの当時はまだかろうじて「漁師さん」がいた。
で、そのおっちゃんが自分でフグを釣って
「いつもやっているように」自分でさばいて
味噌汁に入れて食べながら仕事上がりの一杯をひっかけていたら・・・
しびれてきた。

もちろん「しびれた」だけですむ場合もありますが
このケースでは呼吸筋麻痺が急速に来ている。
とにかく気管内挿管をしないとまずいです。
ところが・・・フグ毒のやっかいなところは・・・
「筋肉の麻痺は進行するが意識ははっきりしている」
のです。
中枢神経への直接の抑制はあまり生じません。
つまりどう言うことかと言うと・・・
「意識ははっきりしているのにだんだん呼吸が止まっていくのが自分で分かる」
のです。
・・・・恐怖ですね・・・

そんな状態なのでおっちゃんパニック!
気管内にチューブを挿入するやり方は2通りありますが
どっちにしろ仰向けにして頭や首をしかるべき位置に据えないと出来ない。
パニックになったおっちゃんはストレッチャーの上で暴れまくる。
医療スタッフに事務当直の人にまで応援してもらっても抑えられない。
気道確保どころか末梢静脈の点滴を入れる事も出来ない壮絶な暴れ方。
まぁ・・・息が出来なくなるのが分かるのだから無理もありませんが・・・

こっちがどたばたしているうちに救急隊はしゅっ、と撤収していた。
・・・・
この隊には後日、別件でヤラレる事になるのです・・・

格闘約十分。
全員がへとへとになり何となく申し合わせたように顔を見合わせました。
「・・・・もう少し大人しくなるまで待とう・・・・」
暴れると言う事はまだ運動筋が完全には麻痺していないと言う事です。
完全に麻痺が進行すれば呼吸も止まりますが暴れなくなります。
全身麻酔がかかったのと同じ状態になるわけです。
おっちゃんはなぜかうつぶせになりたがる。
その方が彼にとってまだラクな姿勢なのでしょう。
そのままの状態で待ちます。
だんだんおっちゃんの動きが止まってきて喚き声も消えてきました。
・・・・静かになった・・・
「今だっっ!!」
えいやっ!と仰向けにひっくり返します。全身の筋力がなくなり
首とあごがぐらんぐらんになっています。いい感じ。
口を開かせスタイレットと言う器具を使いながら器官チューブを入れます。
麻酔がかかったのと同じ状態ですから今度は上手くいきました。
とりあえずアンビューバックで手動の呼吸補助を入れながら
骨董品の人工呼吸器につなぎ変えます。
教科書の「人工呼吸器の歴史」の項目に
モノクロ写真で掲載されているのでは、と危ぶむくらいの骨董呼吸器ですが
がっちゃんがっちゃんぶーぶーと音を立てながらも仕事はしてくれている様子。
その証拠に心拍・血圧は安定している。よしよし。
汗をぬぐいながら(主に冷や汗)転送先を探しにかかります。

意識が残っている状態での気管内挿管はもちろん難しいです。
結構太いチューブを鼻やら口から押し込まれるのですから
抵抗がありますし、咽頭部のいろいろな反射に妨害されます。
このおっちゃんが暴れているうちに挿管するのはどだい無理な話だったのですが
だからと言って、呼吸停止に至るまでじっと見て待つのも根性が要りました。
結果オーライだけれども挿管できなかったらどうなっていたやら。
「こっちがパニックもんだよ・・・」
ぶつぶつぼやきながら電話をかけます。

その当時は大学病院の3次救急とつながりがあったので
そこの当直指導医に泣きつきました。
「フグ中毒患者でして・・・」と電話で言うと
「・・・え゛っっ!!?・・・」と引き気味。
もう挿管してありますしバイタル安定しているのでお願いしますと言うと
とにかく連れて来なさい、と言う事になりました。
事例が事例なので別の救急車を呼んで付き添って大学病院まで搬送しました。
到着するとスタッフが大勢出てきててきぱきとおっちゃんを運び込んで
最新の呼吸器につないでくれます。
研修医たちは「フグ中毒」と言う珍しいケースに遭遇してちょっとうれしそう。
張り切って立ち回ります。
・・・・結果論かも知れないけれども・・・
こういう設備・人材の整った施設に始めから連れて行けっていっただろぉぉ!
あの救急隊リーダーの顔を空に思い浮かべながら無言で絶叫する私。

救急車で当直病院につれて帰ってもらいました。
その後の記憶が無いのですが
多分、その後は大した外来患者も来ず
病棟も安定していたのだと思います。
助かった・・・・

2010年4月27日火曜日

フグ中毒・その1

毒があると分かっていても、いや、だからこそ
「フグを食べたい!」と言う欲望は
古来から日本人のDNAに脈々と受け継がれているようで
毎年どこかで「フグ中毒」は発生します。

ちゃんと毒の部分を除去すれば問題は無いのですが
「この痺れるのがいいんだ」
と通ぶって危険部位を食べてお亡くなりになる方とか
食べるほうも出すほうも「毒があるなんて知らなかった」
と言うちょっと信じられないケースとかいろいろ。

昔の話です。

工業地帯の某A市の某外科系病院。
大層、環境がナニな地区で
やってくる患者も患者
受ける方も野戦病院状態。
そんなところで週末一人当直をしていた私・・・・
怖いもの知らず+お金ほしさでしたねぇ・・・(遠い目)
貴重な体験もさせてもらいましたが。

病院自体は外科系ですが
外科医はオンコール。
何事もなければ気楽な当直のはずでしたが。
「漁師さんが自分で釣ったフグを食べて痺れています」
救急隊から連絡が入りました。
フグ中毒!!
本での知識はありますが見たこともありませんがな!

フグ毒の成分「テトロドトキシン」は厄介な毒です。
厄介な点はいくつかありますが
なにが一番厄介かと言うと
呼吸筋麻痺に至る場合があることです。
そして解毒剤はありません。
つまり重症の場合は人工呼吸器管理が必要。

「呼吸器管理ができる処に行ってくれ!」
と断ります。
なんたってぼろぼろの野戦病院・・・
酸素だって中央配管ではありません。
「酸素吸入!」
と叫ぶと看護師さんが2人がかりで
身の丈ほどもある巨大酸素ボンベをどこからか
ゴロゴロガラガラ音をたてて引っ張り出してくる施設です。
呼吸器なんて・・・一応はあるのですが
骨董品もの。
そこにフグ中毒なんてとんでもない!!

しかし相手の救急隊が食い下がります。
「いや、ちょっと唇が痺れているだけですから・・・
ちょっと見てもらえればいいんですから・・・」
とひつこい。
そのひつこさに負けて「来て下さい」と言ってしまった私。
どれだけ後悔したか・・・・

後日談になりますが、この時の救急隊のリーダーの
救命救急師が超曲者で
その後、何回か「だまされる」事になります。
10数年経った今でも顔は忘れられません。

病院が搬入を断ってたらい回しのなんのと
昨今、大層な問題になっています。
「めんどくさそう」「しんどいし」
で「満床お断り」にしているケースがあるのも事実。
しかしてなんでもほいほい受けるわけにもいかないのです。

救急隊としてはどこかの病院に押し込んでしまえば仕事終了。
後は病院の責任になるので
病院のレベルとか度外視してなんとか押し込もうと必死です。
病院にいったん収容してしまった後で重症化して
高次病院への転送が必要になっても
その受け入れ先は病院・当直の医者が探して交渉しなければなりません。
ただでさえ受け入れられにくい週末に
当直の医者が必死に電話しまくっても
相手の病院当直医も「はいはい」「でも無理」で断ります。
その間に患者の容態は悪化・・・
死亡したら自分の責任です。
次の転送先を探すのに救急センターは手伝ってくれません。
今時、地域によってはしてくれるのかな?
とにかくその時期はA市でも他の近隣地区でもしてくれませんでした。
「病院間の転送はしますが受け入れ先を探すのはそっちの仕事でしょ!?」
でガチャン。

こうなると運び込まれる医者も警戒心アップ。
ますます受け入れが悪くなる。

そして・・・
ついには「偽装」が始まります・・・・

「ちょっと痺れているだけ」の60才がらみのおっさんを
救急隊が運び込んできました。
見るなり
「なんや!呼吸が止まりかけているやないかぁぁぁ!!!」
私、絶叫。

・・・・・
救急隊が収容した時は「ちょっと痺れているだけ」で
車中でどんどん悪くなったのかもしれません。
どうも他の病院でも断られていた様子だし
その間に容態が変化したとも考えられます。
だけど「呼吸器管理が必要だ」と言う見解を押し切って連れてきて
息、止まりかけじゃん・・・

冗談じゃあない!!
「挿管!!」

気道を確保するために口から気管支にチューブを差し込みます。
そこからが地獄でした・・・・

2010年4月22日木曜日

常套句「心の闇」

「ペット虐待」親たち

(産経新聞 iza! 4/14より引用)
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 厚生労働省によると、年間4万件を超える児童虐待では平成16年以降、心中を除いても毎年50~60人の命が奪われている。中でも、2歳の次女の胸をエアガンで撃つなど、子供を使って遊んでいるとしか受け取れない、常軌を逸した行為が目立ってきた

■「心の闇」解明必要
 精神科医の斎藤学さん(69)は「『しつけをしただけ』と言い張る虐待と、まるでペットを残虐に扱うかのような虐待は異なるもので、一線を画すべきだ。『しつけ虐待』は家族の枠組みの中で起きる一方、家族の枠組みが崩壊したところで起きてしまうのが『ペット虐待』だ」とみる。

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「おいおい、ペットならば虐待していいのかよ!?」
と言う突込みがなされていましたが本当に・・・。
言葉で解説出来ない事例には
「心の闇」と言う常套句を被せてブラックボックスにぽい。
と言いますかちゃんと解説していますよね。
「家族の枠組みが崩壊したところで起きてしまう」と。
要は遺伝子的・戸籍的には親子、家族ではあっても
生物・社会的に家族ではないんでしょう。
要らないんでしょう。
邪魔者はいたぶって殺す。
ある意味、すごく本能的なのかも。

虐待してしまう自分に悩んで医療機関に駆け込む親も居ます。
そんな人はまだ「してはいけないことをしてしまう」と言う自覚がどこかにあるわけです。
「ペット虐待」はそこのところの自覚がゼロみたいですね。
ヒトとして「していいこと」「してはいけないこと」の認識が欠如。
これは戦後社会が「道徳」教育を放棄した・放棄させられた
結果だと思いますね・・・
個々の事例で当事者の心理分析しているだけでは
すまない問題ではないでしょうか。

で。
悩んで医療機関に相談に来る人もいます。
で、医者はどうするかと言うと
「話を聞かない」
この態度に徹します・・・

本人が「私は子供を虐待してしまい自分で自分を止められません!!」
とはっきり訴えていても
「あっ、そう。睡眠薬飲んでぐっすり寝てね」
くらいで追い返します。

児童相談所や警察がからんでくるとややこしいだけですし。
事件として表に出る前には通報・相談するって
どこへどう持っていったらいいかお互い分からないし。
病院としては「かっかしているんでしょ、寝ておきなさい」
くらいしか言えないのも事実なのですが。

以前、勤務していた某医療機関で
あまりにも深刻な感じの人が相談に来ました。
私も困って精神科出身の院長に廻したら・・・
「あっ、そう。睡眠薬飲んでぐっすり寝てね」
で10秒で退場させた。
あっ・・・さすがは経営者だな・・・・
と感心しましたね。
「虐待が絡んでいる」「やばそう」「社会的問題になりそう」
→「病院の評判にかかわる!」→「即刻退場!」
ですね。
真剣に受け止めようとした勤務医の私が甘ちゃんなのです。

だから個々の「心の闇」に迫ったところで
解決するわけでもないだろうに・・・と思ってしまいますね。
「くさいものには蓋をしまくる」大人の行動が要求される社会ですから。

社会自体が「闇」ですよね・・・

2010年4月20日火曜日

モンスター・シルバー

「モンスター×××」
こんな言葉が派生し始めたのはいつからでしたっけ?
とにかく一般常識が通じない。
究極のわがまま、ジコチュー。
そして攻撃的。自己主張が強く周囲を振り回して恥じるところが無い。
これまた最近派生している言葉で
「××崩壊」があります。
「モンスター大量発生で日本社会崩壊」
に至っていると思いますね・・・・

で、高齢者も負けてはいない。
キレる老人が社会的に問題視されています。
ただ、そこら辺を指摘すると
「高齢者、老人を馬鹿にするのか!」
「虐待だ!」
とそれこそキレられたりして。堂々巡り。

でも呼ばせて貰います。
「モンスター・シルバー」と。

どこまでが元来のキャラで
どこからが加齢による変化=痴呆・認知症なのか
年齢が上がるとともに分からなくなります。
もっと進むと明らかにアルツハイマー型の
攻撃性の強い状態になって介護者などに危害を加えかねない
状態に移行する場合も多い。

医療や福祉はサービスだ!
自分の思うとおりのサービスをしろ!
と憲兵づくに威嚇する老人。

思いつき、気ままで通所やヘルパー・訪問看護の
予定を変える・断る・すぐ来いと命令を繰り返す老人。

100%自分の思う通りにならないと
外来や病棟、自宅で暴れだす人だって少なくありません。

往診・在宅も常時、そのような困難なケースを
数件かかえています。

ケアマネージャーや施設・ヘルパーの管理者、家人などが
寄り集まって相談会を重ねたりするのですが
なかなか突破出来ない事例も多い。

身寄りが無い、家人にも見放された人は
金銭管理が出来ず
病院側としては未収のまま続行せざるを得ない場合もあります。

都市部だから地方だから、と言う境界が
悪い意味でどんどん無くなって来ています。
地方だと大家族制がまだ残っているので
家庭内での支援が期待できそうに思うのですが
かえって知らぬ存ぜぬノータッチの家庭も。

日本全国、これからますます
身体・メンタル・経済的に支援、処理しきれない
高齢者問題が増え続けるのでしょう。

若者が全員キレるわけではない様に
もちろん高齢者全員が問題なわけではありません。
ただ、現在から今後の日本社会の人口年齢構図の
アンバランスを考えると
暗然とした気持ちになります。

2010年4月19日月曜日

引きこもりの果て

愛知・豊川の家族5人殺傷
(毎日新聞 4/19より抜粋)
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愛知県豊川市の一家5人殺傷事件で、岩瀬高之容疑者(30)=殺人未遂容疑で逮捕=がインターネットを使用する電話回線をいったん家族に止められ、事件2日前の15日に「殺して火をつけてやる」と家族を脅していたことが一家の関係者の話で分かった。
 一家の関係者によると、殺害された岩瀬一美さんの毎月の給料は無職の長男、高之容疑者に管理されていたといい、引きこもり状態だった高之容疑者と家族のいびつな関係が浮かぶ。
次男の会社関係者や親族によると、給料を管理していたのは高之容疑者で、20万~30万円の収入から一美さんに5万円、母正子さん(58)に4万円を毎月渡し、残りを自分で使っていたという。
こうした状態について、次男は会社関係者に「父が兄に強く言えない」と話していた。一美さん自身も親族に「私が言うと(高之容疑者が)怒るんだよ」と困った様子で話していたという。
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しばらくニュースを見ていなかったら
こんな事件が起きていたのですね・・・
少し前に病院内で出くわした事例を思い出しました。

「40過ぎの長男の体調が悪い」
と両親が長男を救急車に乗せてやって来た。
見れば高度の肝不全。
・・・・何年も引きこもり+酒びたりの生活だったそうだ。

搬入された時は直接関わっていなかったのですが
病棟で「意識状態がおかしくなった」と呼ばれたので行ってみました。
腹水で腹は蛙腹。顔色・目つきがもう生きた人間のものではない。
ここに至るまで何年引きこもり生活していた、させていたんだ。
そう思いつつも一通りバイタルチェック。
血圧・呼吸は安定している。
高度の肝不全なので意識状態が不安定なのは仕方なし。
個室に入っていたのでICUに移動させた。
それが大騒動のきっかけになるなんて・・・

状態が不安定な患者を観察・対応しやすくするために
ICU、観察室に置くのは医療サイドとしては当然の処置。
ところが連絡を受けて駆けつけた両親が
「なんで個室に居ないんだ」
「どうして広いところに移したんだ」
と騒ぎ立てる・・・と言うか怯えている。
看護・加療の面からの措置だ、と説明しても
なんだかそわそわびくびくしている両親。
数分後、その訳が判明した。

意識混濁して動く体力も無いと思われていた長男が
突然、目を見開いて大暴れ!
「なんだ!!ここは!!」
「明るいじゃないか!!広いじゃないか!」
「何でこんな管(点滴)が付いているんじゃ!!」
点滴の管は抜くわ立ち上がって暴れるわ・・・
男性看護師が何人も跳ね飛ばされ
一人は逃げ遅れて首を締め上げられる有様。

かなりの量の鎮静剤を打ち込んでようやく少しはおさまったが
こういう強い興奮状態に陥ると
並みの薬量では抑えられません。

この時、両親いわく
「だから個室に入れておいてくれと言ったのに・・・・」

引きこもりを長期間していたため
広い空間、明るい処に居るのが耐えられなかった、と言うわけ。
致し方なく個室に戻ってもらった。

ここまで来ると医療の及ぶ処ではありません。

興奮と意識レベル低下を繰り返して
数日後に死亡しました。
こころなしか両親はほっとしている様にも見えました。

何らかのきっかけで引きこもりになる=社会的に活動する力が無くなる。
これはもちろん大きな問題です。
家庭内でどう対応していいか分からない。
本人の要求通りにしないと暴れる、危害を加えられる。
叱れない、是正できない。

豊川の事件では父親の給料を長男が握って
ネットで買い物三昧。
ネットを切られると暴れた・・・
なんで無職の長男に家計を抑えられるのかなぁ、と思いますが
暴力が激しくて致し方なし、だったのでしょうか。
やはりわが子が不憫でかわいそうだから
暴れられるよりはお金をあげてしまっていたのでしょうか。

私が出くわした例も同類のパターンです。
なんで無職で家から一歩も出ない・出られない人が
肝不全になるまで酒を飲み続けられるのですか?
「暴れるから」と両親がせっせと買って与えていたからです。

この様な構図の果てに病気で自分が死ぬのは
まだしも穏便な結末だったと思います。
家人を殺傷したり
もう少し外に出られる人だったら
通り魔的な事件を起こすとか
別の結末を迎える事例は多いはずです。

社会と自分、家族と自分の関係を良好に保つのは
いつの時代、どこでも難しいものです。
妥協しすぎると相手がエスカレートする。
抑えすぎると反発を招く。

・・・・・
病院での例は両親は特に何も言わずに帰って行きました。
後日談があります。
どうやら弟が居てその弟も引きこもり傾向らしく
「ネットで調べたら兄に与えられた医療行為は
間違いなのが分かったから訴訟の準備をする」
とか言っているとか言わないとか・・・。
今のところ具体的に何も起きてはいませんが。
両親の苦労は終わったわけではなさそうです。

2010年4月14日水曜日

製薬会社の業務停止命令

田辺三菱に25日間の業務停止命令

弁当屋さんが食中毒出して営業停止ならばしょっちゅうだけれども
製薬メーカーの業務停止命令とは・・・?
(医療介護CBニュースより引用)
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田辺三菱製薬の子会社バイファが遺伝子組み換えヒト血清アルブミン製剤「メドウェイ注5%製剤」の承認申請資料のデータを改ざんしていた問題で、厚生労働省は4月13日、田辺三菱製薬に対し、25日間の第1種医薬品(医療用医薬品)製造販売業の業務停止を命じたと発表した。子会社のバイファも、30日間の医薬品製造業の業務停止処分を受けた。
 同省の発表によると、バイファが品質試験、製造工程の各段階でデータの改ざんなど薬事法違反に当たる不適切行為を行っていたのに対して、田辺三菱はバイファとの情報共有・伝達が実務的に機能していなかったため、管理・監督が十分にされておらず、バイファの不適切行為を漫然と見逃し、承認申請資料の信頼性の確保と、適切な製品の製造管理、品質管理を行わせることができなかったと指摘している。
 
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「製造工程の各段階でデータの改ざんなど
薬事法違反に当たる不適切行為を行っていた」って・・・
全部がうそ?で固めた?と言う事ですか?

内容を読んでもなにをどうしたのかがまだ分かりませんが
こういう事件は「よく表に出たものだ」とも思います。
改ざんした、と言ってもそりゃあ「しろ!」と
命令があったに決まっているし
それが表に出るには内部告発・・・かなぁ・・・

ちなみにアルブミン製剤にも遺伝子組み換えがあるとは
知りませんでした。
勉強不足でした・・・
私自身がこの様なごっつい薬剤を
取り扱わなくなってから長いもので・・・
ちょいと検索をかけてみました。

遺伝子組み換えヒト血清アルブミン製剤(商品名:メドウェイ注5%、同25%、ステム注5%、同25%)2007. 11. 29



献血に頼らなくてもいいので安定供給が望めて
感染症のリスクも減って・・・と期待の星だったわけですね。

でもどんな段階のどんな内容かはまだ公表されていませんが
データ改ざんではねぇ・・・

「やれ!」と圧力をかけられたらやらざるを得ない。
そこで拒否ったら某スカ○イマークの機長のように
即日解雇の憂き目・・・と同じ構図が目に浮かびます。
子会社が改ざんしていたがそれを管理し切れなかった
みたいな言い訳はトカゲのしっぽ切りだし。
どこも同じ人の世ですねぇ・・・・

家と病院の狭間で

先日の往診、大荒れ・・・

定時往診の件数は少ない。
天候は悪い。
さっさと片付けて内勤業務に励むべし・・・
と段度っていたがそうはいかなかった。

まずは訪問看護ステーションから連絡が入る。
97歳のお婆ぁが脱水起こして入院。
家に帰りたがるので退院。
しかし「ご飯が食べられない」との事で自宅で点滴。
・・・・よくある話なのですが
この「ご飯が食べられない」がかなりくせもの。
家人・介護者は「朝・昼・晩3回の主食・副食を全量摂取」
しないと「食べられない」「食事が取れない」「死んでしまう!」
と訴えがち。
・・・・ほぼ寝たきりでご高齢で1日3回きっちり食べられる
そういう事はありえないのですがねぇ・・・・
周りが自分の年齢、活動性のものさしで
与えてしまい食べた食べられないを判断して
「点滴!」「入院!」「流動食!」と騒いでいる事も多いのです。

まぁ、それはともかく・・・・
そのお婆ぁはジュースや饅頭をぼちぼちとっている様子。
「それで良いんですよ」
と言うと介護者がようやく納得します。
「3度の食事をとらない」→「介護の仕方が悪いからとらない」
→「自分が責められる」
と言う思考回路、防衛意識が働くみたいですねぇ・・・

点滴に入った訪問看護師があわてて連絡をしてきたのは
本日になって急激に熱発してきたからです。
定時往診の合間に差し込んで行ってみます。
肘がパンパンに腫れていて動かすと痛がります。
・・・・
よく聞くと「3日前から痛がっていた」との事。
うーん・・・

関節炎は関節炎です。
細菌性のものだとしてもどこから感染するのか?
膠原病的な要素はないし・・・
高齢者に限らずどうも説明がいかない
単関節の炎症と言う現象に良く出くわします。
まあ、専門の病院・医者に見てもらったら
なにかしらの原因・病名は分かるのでしょうが。

念のため採血をかけると
「・・・思っている以上にCRP(炎症反応)高いじゃないの・・・」
家人に電話連絡。
先日の入院の前には
「家で最後まで看取るのか、入院させるのか」
と家人判断を迫ってみました。
その時は「なるべく長く家で看たい」と言ったのですが
次の日の朝に「入院させてくれ」
・・・「なるべく長く」が半日かいな・・・・
考え・態度がころころ変わる家なのでこっちも用心。
今回は訪問看護で施行している点滴に
抗生剤を追加する事で皆さん納得。

「あそこは行くたびに態度が変わる」
訪問看護の人にちょっとぼやいてしまいました。
「どうも、事あるごとに親族会議を開いていて
そこで出した意見がしょっちゅうブレるみたいですよ」
・・・・なるほど・・・・

本人が入院を嫌がっていたところで
家人・親族が決めてしまえば
家には居られません。

ようやく病院に帰ってきたら・・・
「○○さんが退院して入院しました!!」
「・・・・????何・・・・・?」

95歳のお爺ぃがちょっと遠くの病院の整形外科に入院していた。
数年前に手術した股関節の部分から
金属がはみだしている、との事で連絡があったのだが
あいにくその日は私も整形外科医も不在。
別病院に行ってしまって
「どうなったのかなぁ・・・」
と気にはしていた人なのですが。

「向こうの病院の整形外科を退院させられたが
家に帰る途中、あまりにも状態が悪いので
うちに寄ったら入院」

むこうの整形外科さんは股関節の部分だけを見て
「金属は押し込んだし皮膚表面の傷も治ったから
整形外科は退院」
とした様子。
まぁ、確かに局所だけ見ればおっしゃる通りなのですがね。
しかしてお爺ぃを見れば
全身むくみ倒して意識はほとんどないわ両手の皮膚はずるむけだわ
ぜこぜこひゅーひゅーと喘いでいるわ・・・
聞けば3日前からこっちは本当に食事も水分も採れていないとの事。
おーい・・・心不全、脱水、肺炎ですよぉ・・・・
どんな一般人が見ても状態が普通ではないのはわかりますよぉ・・・

「家で看取るのだ」と言う方針があって帰すのならばまだしも
「もう整形でやる事ないから退院」で
全身状態の悪い人を追い出すのはひどいでしょ。
それが95歳で重度痴呆の人でもです。
確かに整形の患者さんではなくなっていますが
内科医に相談するとかせめてこっちに連絡してくれるとか・・・

本当に股関節しか見ていなかったのか
「あ、状態悪くて死にそうだし面倒だから退院させちゃえ」
と思ったのか・・・
両方か・・・

家と病院の狭間で患者も家族も彷徨っています。
医者もトラブルを避けたいのと
いわゆるプライマリケア技術の不足で
お互いに押し付け合いになって消耗しています。

2010年4月12日月曜日

ようやく時代が振り向いてくれた・・・・かな?

放射線科医の地位向上

先日、画像読影を外国に下請け云々のニュースがありました。
ちょうど学会総会の直前の報道だったので
わざと火に油を注ぐつもりか?
と思っていたらこんな内容で続報が・・・
興味・関心の無い人にはばらばらの報道に見えるでしょうが
これは繋がっています。
水面下で火花が散っています・・・・
(医療・介護CBニュースより引用)
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群馬大医学部の遠藤啓吾教授は4月9日、
横浜市で開催されている日本医学放射線学会の総会で、
「放射線科医からみた画像診断の診療報酬と我々の社会的地位」と題して講演し、
放射線科医の社会的地位を向上させるため、
画像診断の診療報酬を引き上げるべきと強調した。


 遠藤教授は放射線科医について、小児科、産婦人科、外科などの
医師と比べて「社会的にあまり注目されていない」と指摘。
 放射線科医の社会的地位向上のため、
画像診断の診療報酬増や、医師が技術を磨いて
病院や医師会などで活躍することなどが必要との認識を示した
(↑ま・・・当たり前の事ですが・・・
いろいろな意味でおざなりになっている面がある事も確か)

 また、「医療経済における放射線医療」について講演した
全国自治体病院協議会の邉見公雄会長は、
「麻酔、放射線、病理が日本の医療で一番弱い。
(中略)病院のレベルはこの3つの科によってほとんど決まる」と指摘。

 さらに、医療と教育を「日本の二大基幹産業」と表現し、
「医療費と教育費の底上げ以外にこの国の道はない」と強調。
その上で、よい機械や技術、高度な知識を
適切に評価していく必要があるとの考えを示した。
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とにかく報道の内容には拍手。
ハードだけ買い揃えて意味の無い検査を乱発、
それで数少ない読影医に「とにかく処理しろ」と押し付けるのは無理です。
診療報酬を上げればいい、と言う問題だけではないと思います。
上げれば上げたで
「この読影レポートが何点だからもっと積み上げろ!!」
とありえない件数をさばかせようとする経営者も居ますからね。
出来ない、と断るとこっそり偽装したりして・・・・
最近はレポートもファイルメーカー入力だったりするから
誰が入力してもばれっこない・・・みたいな。
監査する方もレポート内容までチェックする力も時間もありませんしね。

患者、医者、経営者、社会の認識を変えていかないと
解決にはなりません。

この国における放射線医の社会的な地位の低さ、認識のなさは
昔からいろいろな場面で思い知らされてきたものですが
それに「麻酔」と「病理」で3点セットとは思いつきませんでした。
うーん・・・裏方さんではありますがね「麻」「放」「病」
この3科だけではなく根幹を成す大切な仕事はいっぱいあります。
みんな必要なんです。
外科医偏重のドラマ、漫画であおってきた社会の風潮も
どうかと思いますよね。

医者の仕事にも厳然としたヒエラルキーがあるので・・・
また、そういう伝統?封建主義がきっつい地方の出なので
そりゃあ「放射線科医です」なんて口にした途端
「そんな恥ずかしい事を表で喋るな!!」と
親・親戚から総攻撃・・・
いや、事実でして・・・恥ずかしいらしい、親・親戚としては。
よく分かりませんが。
まあ、そこまで極端ではないにしろ
「放射線科の医者?何してんだか」と言った見下し感は
厳然としてありますねぇ・・・・

報酬がうんぬんがもさる事ながら
理解・認識を深めてもらう事には大賛成。
ようやくこういう報道が出てきてくれるようになりました・・・・

法医学というジャンル

先週末になりますが法医学関連の基礎的な研修会に参加しました。


専門外の会に参加するのは初めてで

集まる人もカラーが違うなあ・・・と一人で感心。

検死・検案は人目につかない業務ですが

社会的に大切な役割を担っています。

警察・消防との連携をどうするか、など各地で皆さん模索されている様子。



昨年夏の兵庫県佐用町の集中豪雨の事例を取り上げての講演がありました。

スライドで見せられると改めてこの災害の規模の大きさが分かりました。

講演者は佐用町の地元のお医者さんで

なぜここまで水害が拡大したかも分析。

もちろん気象条件が主たる原因ですが

川に架かっている橋の構造にも問題があるそうです。

「私が子供の頃は少し増水すれば橋は簡単に流れた・・・」

現在は強度の高い立派な橋になっていて

すると増水すればごみや木が流れてきて橋げたに引っかかる。

そこで水がせき止められた形になるので

水は両横の市街地にあふれ家屋・人的被害が増す。

・・・・・高知の沈下橋の構造の逆ですね・・・・

インフラは大事ですが

大きい事、強い事が最善ではない、と言う概念が必要ではないでしょうか。

法医学とは直接関係が無い要素かもしれませんが。



インフラと言えば検死・検案の業務だってインフラなのですが

どうも人手不足、社会的な理解不足の面があるようで

各方面の方々が現場で苦労されている側面も見えました。

かと思うと「協力を申し出たのに必要ないと断られた」とか

お互い微妙にあてこすりをしていたりでおかしかったですね。

「よかれと思って」は仇

本日の往診は件数こそ少ないが新規が加わってかなりヘビー。


外来に来れなくなる→家人が薬だけ取りに来る

のパターンに陥った人には出張、と言うわけ。

介護保険のからみもあるしコンサルタントの側面が強くなる。

もっとも、医療のそして医師の本質はコンサルタント業だと思っているが。

投薬の手術の技術的な面ももちろん大切だが

大前提として「送り手」「受け手」の同意・合意がないと

いくら最先端・最高の技術を施してもそれはおせっかいに終わる。

今の世の中、患者も医者も情報過多で

何か余計な処で力を消耗している気がしてならない。



今日のテーマは「よかれと思って」

元来の性格に痴呆も加わって入院させれば暴力を振るうわ

思い通りにならないと当り散らして支援を拒否るわ

家族もよりつかないわで難儀しているじい様がいる。

要するにだだっ子の延長なのだが70をとうに超えてだだっ子では困る。

困るが仕事として関わる者はかかわらざるを得ない。

予想はしていたが往診も「あれもいらんこれも気に食わない」で拒否。

「薬もいらん」と怒鳴り散らすし、服薬管理もままならないため撤退。

担当のケアマネさんが自分も怒りながらも熱心に調整はしてくれているのだが。

このケアマネさんは本当に粘り強く熱心にしてくれるので

わたしも可能な限り調整には応じる。

それはいいのだが、このケアマネ氏、ぽろりと

「よかれと思ってやっているのに」全部拒否られる、と口走る。

うーん・・・

こっちの「よかれ」と相手の「よい」が一致する事ばかりではないのだけれどもなぁ・・・

熱心に仕事をするあまり相手のペースに飲み込まれている感じ。

相手がある一定以上の理解力を持って同意する方向をむかないと

こっちの「好意」もかえって仇になる。



本日は同様のパターンが3件発生する。

もう1件は病院職員の家族との問題。

もう1件は私用の出来事なのだが

途中でメールががんがん錯綜するので無視できず。

共通するのは「よかれと思って」

立場・状況としては全部違うのだが

こんな話が同じ日に起こるのはかなり珍しいな、と思う。



「よかれと思って」何かをする時のヒトの心理とは何だろう。

善意が行動の発端である事は間違いない。

それが仕事でも善意がなければ始まらないだろう。

しかしてその「善意」にはどうしても「我」が入る。

送り手も人間だから「よい事をしてあげたのだから感謝して欲しい」と思う。

意識・無意識はともかく何%かは絶対「みかえり」を期待する。

期待するのが当然だとも言う。

聖人・聖女ではないから、普通の我々は。

そこを押し返されると「ハラがたつ」

始めは「仕事だから」「親だから」「大切な友達だから」と理性で我慢するが

どこかで限界を超えるとヒートアップ。

そうなると自我と自我の押し合いになって、これは絶対に解決しない。



職員が私の部屋に来て親の相談を延々とした挙句(相談はかまわないのだが)

「よかれと思って・・・」と口走るので

「そこが邪魔!」と釘を刺す。

「あなたが"よかれ"と言う思いを抱きながら接しているうちは解決できない。

お互いの"よい"内容が違うのだから。

親といえどもそこは割り切って"よかれ"を捨てて付き合わない限り無理」

はっきりとそう言う。

そうですね・・・と言いつつも「仕事だと割り切れるけれども親だと・・・」とも言う。

その心情は分かるが、だからかえって厄介なのだ。

その親さんは疾病の後遺症がストレスになっているので

扱いが更に難しい。

外では普通の顔をして家庭内でいらつく=家族への甘えの下手な表現の

パターンにはまって抜けられない。

実はその親さんが発症した時、気がついた私が院長命令を無視して

強引に専門病院に転院させて、生きて家に帰る事が出来た経歴がある。

しかし、後遺症の出方がやや複雑だったこともあり

新たな問題を抱える事になってしまった。

・・・こんな事ならば見逃して重症化、落命させた方が

本人も家族も苦しまなかったのではないか・・・・

これは私の「よかれと思って」が結果、仇になった形。

少なくとも意識して見返りや感謝を期待したわけではない。

仕事として当然の事を推し進めたつもりなのだが複雑な思いである。

「よかれと思って」が葛藤となり

「命を救う」が新たな苦しみの火種となる。



平穏に生きるというのは実に難しい。

2010年4月8日木曜日

木村コーチのご冥福をお祈りしますが・・・・

くも膜下出血、動脈瘤膨らみ破裂…高い死亡率
(yomiuri online 4月7日より引用)
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くも膜下出血は、脳の表面を走る動脈に出来た動脈瘤が、血管の内側からの圧力で
少しずつ膨らんだ末に破裂し、脳と、くも膜の間に出血する。
 高血圧の持病のある人や喫煙者などで発症の割合が高くなる。スポーツも一時的に血圧が高まるため、動脈瘤破裂の引き金を引く心配がある。血管の壁が生まれつき弱く、こぶが膨らみやすい体質を持つ人がいると見られている。
50歳代が、脳動脈瘤破裂の割合が最も高いが、埼玉医大国際医療センター脳神経外科の石原正一郎教授は「脳動脈瘤があれば、30代で破裂してもおかしくない」と話す。
************************************************
内容も正確です。
でも、有名人の病気、死因が発表されるやいなや
「こんな怖い病気があったんですよ!あなたも危ないですよ!!」
と不安を掻き立てるような論調の記事を垂れ流すのは・・・・
いつからですかね、最近すっかりこのパターン。
飽きました。止めてください。

喫煙者でもスポーツでも体質でも30でも50でも
「危ない危ない」と言われたら
どうしたらいいんでしょう→病院に行きなさい、と言う事か。

脳血管の評価には侵襲の低いMRIアンギオグラフィ(MRA)が
多用されます。
いわゆる「脳ドック」です。
でも、この検査も器機のスペックによって検出率が
かなり異なります。
また、動脈瘤を見つけてもそのサイズと破裂する確立の
相関性はまだ十分確定していません。

脳神経外科医先生のサイトをお読み下さい
未破裂動脈瘤の取り扱いは難しいのです・・・・

マスコミが(作為的・習慣的に)抽出した不安に乗せられて
「検査検査!治療!」と病院に駆け込む人が
増えない事を願います。

2010年4月7日水曜日

画像診断の問題

CT診断を格安・中国に下請け

(Yomiuri online 4月6日より引用)
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医師不足などの影響で、患者の検査画像の診断をインターネットを利用して外部に依頼する医療機関が増えるなか、一部では格安サービスをうたい中国の医師への委託も始まっている。
 中国人医師による画像診断サービスを行っているのは「日本読影センター」(大阪府)。日本人医師によるサービスの傍ら、2008年に中国への依頼を始めた。CTなどの診断を外部に依頼した場合、日本国内では1件当たり3000円前後が相場なのに対し、700~900円で請け負う。結果は日本語に翻訳された報告書で依頼した医療機関に返送される。
吉村英明社長は「契約している中国人放射線科医は約15人おり、診断力はあらかじめテストしている。ただし、日本の医師免許はないため、『参考所見』という位置づけ」と話す。

 国内のCT、MRIの合計数は約1万7000台と、人口当たり先進国中で最も多い。一方、専門医は5000人程度にすぎない。民間調査会社矢野経済研究所によると、遠隔画像診断を利用する医療機関は昨年、1944施設と、10年で8・2倍に増えた。業者も50前後に上るとみられる。 最終更新:4月6日14時42分

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中国人医師の診断能力がどうのこうの、が問題ではありません。
まず、日本人が金にあかせて世界中の高価な画像診断機器を買い漁った事。
その結果、検査症例の質が下がりました。
つまり「ちょっとそこでCTとってもらおっか」
「友達とランチのついでにMRI撮りに寄りました」
という感覚で病院に来る層がどっと増えました。
病院も経営だからお客さんいらっしゃい。
もしくはなんでもかんでも「医療ミス!!」で訴えられるから
「とりあえず検査」「防御CT・MRI」を乱造するしかありません。

また、悲しいかな、オーダーする医者も
どの症例にCT、どの症例にMRIをオーダーするべきか
知らない人が多すぎます。
症例、検査目的によって使い分けが必要なのに
「とにかく撮っておけばいいんだ」感覚の人が実に多い。
現場の指導医がそう教えている場面にも何度も出くわしました。

検査の交通整理、レポート作成をしているのが
放射線診断・読影医、専門医なのです。
華々しい存在ではありませんが
専門医は全国で約5000人ですか・・・・
「なんでもかんでもCT・MRI!!」に対応出来る数ではありません。
オーダー医とデスカッションしながら検査を進めていくべきなのに
ルーチン的、ドック的、訴訟防御的検査を
どんどん積み上げられてはとても対応できません。

かくして「遠隔・外部依頼」の事業が成り立ちます。
遠隔画像診断は症例検討のため各病院をつなぐ
重要な意味のあるシステムです。
そこまでは認めるのですが・・・・

中国に下請けまで出して「参考所見」が欲しいのですか?
まずはタミフルと同じ図式で
海外のメーカーに言われるがまま商品を買いあさり
「それがなしでは成り立たない」社会構造にはめ込まれる
日本人の意識を問題視するべきです。
後先考えずに器械だけをそろえて検査を乱発し
検査の解析が追いつかないアンバランスさをまず是正するべきです。
そして「参考所見」程度でよいのならば
お医者さん、各自で少し勉強してください。
「いや、やはり専門医に見てもらわないと
何かあった時に責任が・・・・」
と思われるのならば国内の専門医と情報交換、デスカッションを
しっかり構築するべきです。

さらに指摘すればこの下請け外部依頼は診療報酬詐欺に使えます。
国内の放射線科常勤医が読影すれば
条件にもよりますが「読影診断料」を請求出来ます。
国内で読影したように見せかけて下請けに出せば
その差額はかなり大きいです。
こういう構図を頭に描いた経営者は少なくないと思います。
調べられればいずればれますが
なにせ検査数が膨大なものなので
厚労省も手が回らないでしょう。

私も某病院で読影専門医として従事している契約なのですが
「人手不足」を理由にいろいろおかしな事を要求されます。
私の名前を使って勝手にレポートを作成する事を
黙認しろ、と脅しに近い圧力をかけられた事もあります。
経営者にとってはレポートの内容・質などどうでも良いのだな、
レポートの枚数イコール札束に見えるんだな・・・・

とにかく「中国に下請け」は
製造業が国内の空洞化を招いた構図と同じで
かつ国内での不正を招きかねない流れだと言っておきます。

2010年4月5日月曜日

「麻酔薬」と「麻薬」の解釈の違い

麻酔薬、「麻薬」指定で災害医療に支障
(Asahi .com 2010.4.10 より引用)
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1月のハイチ大地震に医療チームを派遣した「国際協力機構」(JICA)が、麻薬取締法の規制に阻まれ、災害現場でも使える全身麻酔薬を日本から持ち出せなかったことが分かった。現地の活動に支障が出て、重傷患者の手術ができないケースもあったという。薬物としての使用が問題化して「麻薬」に指定されたためだが、医師らは法の不備と指摘し、厚生労働省に対処を求めている。 ********************************************************************************
「麻酔薬」ケタミンは患者の自発呼吸を止めずに麻酔管理が出来るため
呼吸器などの設備が望めない災害医療現場では
必要不可欠の薬品です。

しかして2003年頃から「ドラッグ」利用目的の密輸が増えたため
07年に麻薬取締法に基づく「麻薬」に指定され、
相手国の輸入許可証明書を持つ輸出業者しか海外に持ち出せなくなった。

まあ、これは当然の措置ですよね。

でも、だからと言ってJICAの持ち出しまでストップとは。
これまでは派遣先の病院にケタミンが置いてあったりで
なんとかしのいできたようですが 今年1月12日のハイチ大地震では、
首都ポルトープランスが壊滅的な被害を受けて地元の医療機能がマヒしたため、
対応できず、重傷者の手術をあきらめざるを得ないケースも
あったとの事。

薬物汚染阻止の為に法的規制をかけたのはいいのですが
それが他の面でどのような事態を引き起こしたのか
現場からの訴えがないと役人には伝わりません。

今回のハイチ地震の事例をふまえてJICAと外務省、厚労省とで
協議がなされているようですが
さすがお役所「法律の枠内で活動してもらわないといかん」
「とにかく許可証明を受けろ」

法律を作っちゃうとまず「法律ありき」で
硬直してしまう構図はそこここにありますが
災害救助・援助の非常時ですよ。

政府命令で派遣されるのに法律によって活動内容に制限を加える。
おかしいですよね?
せっかく行ったのに自分たちの技術を生かせないなんて。
現場の悔しさがにじみ出る内容です。

2010年4月1日木曜日

99歳の生命力

数年前から往診に行かせて貰っているお爺さまは
御年99歳!!
娘さんの家で若い世代と同居。
もちろん身の回りのことは何でもするし
天気の良い日には近所を散歩されています。

このお爺さまは太平洋戦争の生き抜き組み
しかも職業軍人さん(海軍)でした。
「あのな、大砲の弾が飛んできて"怖い怖い"と
逃げ回っていた奴らは当たって死んだわいな。
わしは"何くそっ!怖くなんかない!!"と
前に出続けた。すると案外当たらないモンじゃ・・・・」
時を経て脚色されている部分があるかもしれませんが
実際に生きておられる方からそう言われると
これ以上の迫力はありません。
・・・真のポジティブ・シンキングですよ・・・・
なまっちょろい青二才が「前向きに!」とか言いたれるのとは
重みが違いますとも・・・・

さしたる病気もなく週2回はデイサービスに通われてごきげん。
デイサービス通所を始めた直後に訪問して感想を尋ねたら
「あそこへ行くとおなごばかりじゃ!!」

・・・男女七歳にして席を同じくせず・・・世代だっ!
怒っているのか?
とあわてましたがよく顔を見るとにこにこして血色が良い。
娘さんが笑いながら解説してくれました。
「お爺さんは最長老で他の利用者さんは全員、年下の女の人。
"すごいわねー、そのお年で私たちよりお元気ねー"と
もててもてて・・・嬉しがっているんですよ!」
よかった・・・そして参りました・・・・

さらに後日談。
しばらくしてその話題を蒸し返して
「年下のお婆さん達にもてて良かったですね!」
と言ったところ
「何がっっ!!」
と憮然として言い返されました。
「婆さんなんかにもてても仕方がない!
わしが好きなのはもっと若い看護師やヘルパーじゃ!!」

すみません・・・言い方・考え方を間違えていました・・・
と平謝りの私。
この欲望、この(良い意味での)色気が99歳の生命力なのです。

アルツハイマー型認知症治療薬を承認申請

アルツハイマー型認知症治療薬を承認申請
(2月9日12時2分配信 医療介護CBニュースより抜粋引用)

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 第一三共は2月8日、子会社のアスビオファーマがアルツハイマー型認知症治療薬SUN Y7017(メマンチン塩酸塩)を厚生労働省に承認申請したと発表した。
 SUN Y7017は、独メルツ社が創製したNMDA 受容体拮抗薬で、アスビオファーマが日本国内で自社開発した。エーザイのアルツハイマー型認知症治療薬アリセプトが神経伝達物質アセチルコリンを分解する酵素の働きを妨げ、神経細胞を活性化して脳の機能を維持することで認知症の症状の進行を抑制するのに対して、グルタミン酸受容体の1つであるNMDA受容体をブロックし、神経細胞内への過剰なカルシウムイオンの流入を抑制することで神経細胞を保護し、症状の進行を抑制する。
 海外では2002年に欧州医薬品庁(EMEA)、03年に米食品医薬品庁(FDA)で承認され、アルツハイマー型認知症の標準治療薬の一つとして、現在世界60か国以上で使用されている。

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新薬開発はもちろん結構な事です。
しかして、この様な報道がなされる度に
「あ、もう私は認知症はならなくてすむわ」
と安心したり
「早く早く!!!」
とあわてる人が出てくるのは困ります・・・・

ひとくくりに「認知症」と言っていますが
この報道では「アルツハイマー型認知症」と言う
保険病名に適応がある薬剤の承認申請が出た、
と言う段階です。
もちろん内容ではそんな事は言ってはいませんが
これがマスコミ、口コミに乗ると
「もう大丈夫!!」と言ったオールインワン万能薬が
明日にでも供給されるような情報に化けるのが怖いです。
「そうではありません。まだまだ時間はかかります。
実際に承認されて臨床に使用して効果と副作用を検証、
統計を取って評価してみないと分かりませんよ」
とか説明して御覧なさい。恨まれてしまいますね・・・・
「せっかくの希望の光にケチをつけるのかっっ!!」って・・・

製薬会社、薬剤師のお仕事はしっかりやって頂かなければなりません。
でも現場は現場。
病院で、施設で、家庭で日々戦いは繰り広げられています。
心を惑わされないように努めたいものです。

抗アルツハイマー型認知症薬として脚光を浴び
「とりあえず高齢者で・・・?な患者には出しておけ」
と言った感じで処方されているアリセプトも
実際の効果が不明瞭だったり
(海外でのエビデンスは決して高くはありません)
相互作用が複雑だったりで
別の弊害をもたらしている感じがします。

2010年3月31日水曜日

新型インフルエンザワクチン大量破棄

ワクチン234万回分破棄
(Yahoo!ニュースより引用)
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新型インフルエンザ対策で政府が用意したワクチンのうち、234万回分が今月末で使用期限を迎え、廃棄処分される。流行の沈静化などで思ったほど接種希望者がいなかったためだ。ワクチンは現在、国産と輸入を合わせ約1億回分が余っており、多くは順次、使用期限切れで廃棄される見通し。厚生労働省は31日、有識者らによる新型インフルエンザ対策総括会議の初会合を開き、対策が適切だったか、検証に入る。
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やはり・・・・
確かに流行の予測は難しく
ワクチンの数の調整は困難だったでしょう。
しかして、これは大問題。
しかも「今月末で使用期限が切れる」のが234万回分で
全体では1億回分が余剰、順次破棄との事。

1回打ちだ2回打ちだとか
年齢、疾病による制限とか
副作用の報告のさせ方とか
今回の流行で検証しなければならない問題
反省点もも多々あるはずですが
ちゃんとアナウンスしてくれるのでしょうか・・・・

今後、このようなパンデミックが起きた時に
教訓として生かせるようにちゃんと整理、
情報公開をして欲しいものです。

2010年3月30日火曜日

往診をしています

往診・・・ご存知?

ある年齢以上の方ならば
「白衣を着たお医者さんが黒い革の往診かばんを提げて
看護婦さんと家に来てくれる」
スタイルを思い出すかもしれません。

けれども、大部分の方は
「何、それ?」
と思われたのではないでしょうか。

今の時代、交通網の発達や救急車の配備で
「すぐ病院に駆け込む」
のが当たり前とされています。
「家に医者が来る???」

私はこの十数年、関西のとある田園都市で
「往診」を行っています。
私のフィールドは限界的な過疎の地ではありません。
近隣に病院・診療所が数件あり
救急車だってもちろん配備されています。

そんな土地で往診・・・・

ひょんな事で始まった私の往診業務です。
時間の変遷によっていろいろな問題が生じます。
決して華やかな世界ではありません。
やりがいがあるかと言うと・・・これまた微妙でして(笑)

とにもかくにも一般的には知られない
知る事のない「往診医」の記録を
ぼちぼちとどめておこうと思います。

普通のお医者さん

ある女性が
「火傷したので病院に行ったら門前払い食わされた!!」
と怒っていました。
「夜診は内科しかないから火傷は外科へ行け」
と言われたとの事。

聞けばコーヒーカップをわき腹に落として
もちろん熱くて発赤が出来たが
さほどひどい状態ではなかった様子。
「その程度ならば冷やしていれば大丈夫なのよ・・・」
と説明したが、彼女は納得しない。

まあ、昨今、何でもかんでもすぐ病院に行かないと
手遅れになりますよ・・・・と脅迫観念を与えられている時代ですしね。

しかしていきなり「外科に行け」はちょっとひどい。
第Ⅲ度広範囲熱傷であるまいし
見ることもせずに拒否ですか。
彼女もそこに対して怒っている様子。

まあまあ・・・・となだめながらふと思いつきました。
「・・・後から"綺麗に治らなかった!!"とかクレーム、
訴訟になるのを恐れていたのでは・・・その内科医・・・・」

最近、結構あるのです。
「跡が残るかもしれない、と言う説明を受けていなかった!」
と言う形で訴訟に発展したらこれは医師が負ける可能性も出てくる。
まさか、常識範囲内の問題で・・・と思うのですが
この国もアメリカ並みの巨額訴訟国家を
踏襲する気配があるので油断が出来ません。

そんなパターンにおびえつつ診療をしていると
自分の「専門分野」の中に完全に引きこもるしかなくなります。

大学病院など高次の病院であるまいし
一般開業医たるもの
ある程度はオールラウンドな診療技術を身につけるべきですが
時代が許さないようです。
「何でも診ます」だと医者の仲間内でも馬鹿にされるし
患者も信用しません。
研修医の全科ローテート制は
その辺の問題解決の意味もあってスタートした筈なのですが
普遍的な診療が出来る医者の育成にはあまり寄与せず
別の問題を引き起こしてしまっている様に思います。

何でもかんでも「専門医」に診てもらわないと
患者は納得しません。
医者もトラブルを恐れて患者のたらい回しをせざるを得ません。
かくして受診科が増え、医療費が増え・・・・

「普通の近くのお医者さん」は駆逐されつつあります・・・・

医療ミス・単純な・・・・ではすまされない?

腎臓の左右とり間違えて摘出
(Yahoo!ニュースより引用)
2010年3月30日
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栃木県の小山市民病院で2月、60代の患者の腎臓摘出手術を行った際、誤って正常な腎臓を摘出したことが29日、分かった。同病院が発表した。患者の容体は安定しているという。


 同病院によると、患者の手術は泌尿器科の医師が2月10日に行った。がんが疑われる右の腎臓を摘出しようとしたところ、誤って左の腎臓を摘出。摘出後に誤りに気付き、直後に移植手術で患者に戻したが機能せず、約1カ月後に別の医療機関で摘出された。

 手術前に行う皮膚のマーキングを忘れたことなどが原因。患者の体力を考え、右の腎臓の摘出は行っていないという。 
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まさか、と思う事故があるのですね・・・・
左右の取り違えは言語道断です。

しかして「癌の疑い」ですよ?術前の段階では。
開けて視て病巣を確認、病理検査に廻しませんかね?
まあ、病理室が併設されているとは限りませんが・・・

何か変だなぁ・・・・と思っていたら
続報があって
なんと「CTフィルムの裏表間違い」
裏にして見ていたら右が左になるわけです。
でもですね・・・メーカーにもよりますが
フィルムの裏表は微妙に光沢が違うものなのです。
裏にして見ていたら当然、写し込まれている患者名や数字も
逆になって違和感があるものなのですが。
・・・・モニター読影診断に移行していれば・・・・

取り違えなんてありえない・・・・
・・・・と思ったのですがこんなブログ記事を発見・・・
外科医が手術部位を間違えて執刀するとき・米国版

・・・・本当に単純なミス・・・は後を絶たないみたいです・・・

2010年3月25日木曜日

救急車が起こした事件

救急車が搬送患者取り違え

(産経ニュースより引用)
2010年3月24日
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「救急隊が到着しない…」実は患者取り違えて搬送 秋田・横手市消防本部

秋田県横手市消防本部の救急隊員が、患者を別の病院に搬送する際、隣の病院の患者を誤って運んでいたことが24日分かった。搬送予定だった患者は約20分遅れで病院に到着し、容体に影響はなかったとしている。
横手市消防本部によると、18日午前10時23分ごろ、市内の病院から80代女性を別の病院に運んでほしいとの119番があった。
 約30分前、通報してきた隣にある病院に、同じ疾患の疑いのある70代女性を搬送していたことから救急隊員が勘違いし、この女性を別の病院に運んだ。70代女性も転院予定だったため誤りに気付かなかったという。
 119番した病院から「救急隊が到着しない」との連絡があり、患者の取り違えが判明。
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消防センターに依頼すると
「確認はもういいから早く来てくれ!!」
と叫びたくなるくらいに何回も確認連絡が来るので
いらいらする事もあるのですが
実際、こんな事が起こるのですね・・・納得。

しかして・・・・こんなニュースを読むと
患者取り違えがかわいい問題に思えます・・・

中国の酒酔い救急車
(serchinaより引用)
2010年2月26日
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救急車“酒酔い”で通行人を襲う―杭州で死者・南京でも事故

 浙江省杭州市桐廬県で2009年10月19日、出動した救急車が人をはね、死亡させた。運転手の血液からは基準を上回る濃度のアルコールが検出され、当人もビールを飲んだ後に運転したことを認めた。検察は2月23日、運転手を公訴した。酒酔い運転で救急車がおこした人身事故は、1月2日にも江蘇省南京市で発生した。青年時報、中国新聞社などが伝えた。
 杭州市内の事故は、夜10時ごろに発生。急病人の発生地点に向かう途中、横断歩道上で55歳の女性をはねた。乗っていた医療スタッフが応急措置をすると同時に、他の救急車の出動を要請。女性は病院に運ばれたが死亡した。
 警察によると、事故直後に運転手の血液から、100ミリリットル当たり10ミリグラムのアルコールが検出された。運転手も、夕食時にビールを飲んだと認めた。
 検察によると、パトカーや消防車、救急車などの緊急車両は、出動時には警報灯をつけ、警報音を鳴らした上で、車線や一方通行、信号機など、一般的な交通制限にとらわれず走行することができる。しかし、安全順守義務などはあり、「絶対的優先権」が与えられているわけではない。同事故では、飲酒の問題は別にしても、横断歩道上に人がいるにもかかわらず走行を続けた救急車側にすべての責任があるという。
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・・・・・ちょっと待って・・・この記事・・・
「飲酒の問題は別にしても」・・・って・・・

別にしてはいけないのではっっ!
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 一方、南京市でも1月2日夜、救急車が自転車で走行中の女性をひく事故が発生した。女性は救急車の下敷きになったが、通行人約20人が救急車を持ち上げて救い出した。女性は病院に搬送され、一命をとりとめた。
警察の調べによると、運転手は個人的な宴会に出席するために救急車を使い、その帰りだった。運転手の血液からは、基準を上回るアルコールが検出された。事故現場で女性を助けた人によると、運転手は相当に酒臭く、ふらついていたという
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なかなかワイルドな事件ですね・・・
ひかれた女性も「救急車の下敷きになって」
生きているというのですから脱帽です。

2010年3月23日火曜日

中国・福建省 診療所の医師が小学生殺傷

中国で小学生13人殺傷
(サーチナより抜粋引用)
2010年3月23日
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中国・福建省の南平市同市延平区の実験小学校校門で登校してきた生徒が
次々に襲われ、8人が殺害、5人が負傷した事件で、
容疑者の男は、人から見下されることや、交際中の女性が結婚してくれないことが
動機だったなどと話した。

  逮捕されたのは同市出身の鄭明生容疑者。鄭容疑者は41歳。
中級専門学校を卒業し、小さな診療所で医師として勤務していたが、
09年6月に「別の分野で身を立てたい」として辞職した。
 鄭容疑者は現場で同校教師や通行人に取り押さえられ、警察に身柄を引き渡された。
事件を起こした理由について「発音がはっきりせず皮膚病もあり、
周囲の人に見下されていた」「交際している女性が、いつまでたっても結婚に同意してくれない」
「診療所を辞めてから、次の仕事がうまくいかなかった」などで、
「生きているのがいやになった」と供述したという。(編集担当:如月隼人)

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以前にこの国でも同じような事件があった。
この襲われた「実験小学校」は
学力の高い子供を集めたいわゆる「エリート校」だそうです。

自分のストレス、コンプレックスや欲求不満から通り魔・大量殺傷事件に至る。
有名な「津山30人殺し」など
類型パターンは後を絶ちません。

犯人が男性だとその発散するパワーも大きく
複数人の殺傷という形をとり
犯人が女性だと「点滴にインスリン」という
小さな内向的な攻撃になるのではないでしょうか?

2010年3月10日水曜日

安全重視は解雇

安全運行に尽くした機長を解雇
(毎日新聞2010.3.9の記事がリンク切れのため
「人生チャレンジ20000km」さんのブログを参照にさせて頂きます。)
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国交省などによると2月5日、羽田発福岡行き017便(ボーイング737-800型、乗客177人)の外国人機長(52)は、客室乗務員のチーフの声が風邪でかすれていたため緊急時の呼び掛けが困難と判断、本社にチーフの交代を求めた。これに対し、社長と安全統括管理者の会長は交代させずに飛ぶよう求めたが、機長は拒否。このため自宅待機していた別の外国人機長を呼び出し、この機長がチーフの声に問題ないと判断して1時間遅れで出発した。同社は交代を求めた機長を同日付で契約解除した。
。国交省は「会長らの行為は安全運航体制を脅かしかねない」と指摘し、安全管理体制を見直すよう求めた。機長2人の判断に問題はなかったとしている。国交省で文書を受け取った会長と社長は何もコメントしなかった。【平井桂月】

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まぁ、確率考えるとこの飛行機がそのまま飛んで落ちて
クルーの一人が声を出しにくくて誘導できなくて・・・

って現実には起こらないとは思いますよ。

でも現場の機長判断が至上命令のはず。
一人目の機長の日常勤務に何か問題があったのか
二人目の機長に脅しでもかけて飛ばせたのか・・・
疑心暗鬼になります。

ついでに即日解雇が出来るんだ・・・航空会社って・・・・

もう古い話になったけれども

建築偽装の問題とか

山本病院とか

「やれっ」と強要されて犯罪に加担させられる構造はありますが

まっとうな事言って即日解雇では

そりゃあ、まっとうな事、言ったりやったり出来なくなりますね。

さすがにスカイマーク社長は怒られていましたが。

「なんで注意されんだよ!こっちはかつかつで廻して必死なのに!!」

くらいにしか考えていないのかもしれません。

だって次の日
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2010/03/10(水) yomiuri online newsより引用

スカイマークは10日、神戸空港に出社してきた神戸発福岡行き便の

男性機長が風邪による発熱を訴え、代わりのパイロットがいなかったため、

午前7時5分発同便と折り返し便を運休した。
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報道の翌日だったので思わず笑ってしまいましたが。
これもとっくにリンク切れ。
どう言う事かな?

航空業界と医療業界。
他にも命に関わる業界は多いのですが
病んでいる構図は共通だと思いました。

2010年3月3日水曜日

インスリン事件で24才看護師逮捕

病院内で90歳台の患者にインスリン過剰投与。
その続報です。
24才京大病院看護師逮捕
(毎日jp.より引用)
2010年3月2日
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インスリン事件:24歳看護師逮捕 京大病院の担当者

京都大学病院で昨年11月、入院患者が高濃度インスリンによる低血糖発作で意識不明になった事件に関連し、京都府警捜査1課と川端署は2日、患者の看護記録に虚偽の血糖値を記載した公電磁的記録不正作出と同供用の容疑で、患者の担当看護師の木原美穂容疑者(24)=京都市左京区吉田下阿達町=を逮捕した。府警はインスリンが人為的に投与されたとみて殺人未遂や傷害容疑を視野に入れて捜査しており、木原容疑者の関与を調べる。
府警の発表では、木原容疑者は「間違いありません」と容疑を認めており、今後、動機を追及する。
逮捕容疑は、昨年11月14~16日、循環器内科に入院中の女性患者(94)の病状が低血糖により急変した際、容体の安定を装うため、入力端末で数回、看護記録に正常な血糖値を入力したとされる。府警によると、看護記録は院内のパソコンで管理され、看護師が個々のIDやパスワードを使い担当患者の状態を入力する。
 京大病院によると、木原容疑者は先月22日、虚偽の数値を記入したと看護師長に報告し、大学が刑事告発した。同容疑者は大学の調査に「(事件の)3カ月ほど前から、自分が当番の日に患者の急変が多いと同僚から軽口を言われたことを気に病み、とっさに正常な思考ができなくなった」と話し、「迷惑をかけて申し訳ない」と謝罪したという。【田辺佑介】
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記事を読んでもいまいちピンとこない内容でしたが
これは自作自演?
「あんたの当直の時、悪くなる患者が多いね!」
みたいに言われたのかしらん・・・・
そんな事を軽く言い合う事はよくあるのですが
冗談が冗談ですまなかった
と、言う事ですか?

これはもちろん個人の責任ではなく
波みたいなものがあって
当たりまくる人と当たらない人
同じ人でも時期によって違う。
私も若い時分には「デビル」とまで呼ばれ
同じ当直に入った看護師に恐れ嫌がられた時期があったのですが・・・

彼女はそんな波やら何やら全て被ってしまって
自己処理出来ずに奇異な行動に出たのでしょうか?
理解できない状況です。

病院の会議でもこの事件を引き合いに出して
「注意するように」とか言われましたが
どこをどう注意したものだか・・・
職場環境の健全さを保つ?
個人を追い込まない???

例えば同僚との関係が悪くて
それで悩んだり苦しいのだったら
その相手と直接対決して話し合うべきです。
上司や管理者に相談するとか。
患者におかしな矛先を向けるのは
いかな「ストレス」「ハラスメント」があったとしても
許される事ではありません。
残念なニュースです。

2010年3月2日火曜日

癌と疼痛ケアに関する認識不足について

「疼痛ケア受けたことない」が6割
(3月2日18時13分配信 医療介護CBニュースより抜粋引用)
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 日本医療政策機構が実施した「がん患者意識調査」によると、
がんに関連する痛みや、がんの治療による痛みを和らげる治療(疼痛ケア)を
受けたことが「ない」と答えた人が59%と半数を超えた。
 治療方針の決定過程や、受けた治療について、
「どちらかといえば不満足」「不満足」とした理由を調査したところ、
上位を占めたのは「情報が少ない」「精神面に対するサポートが不十分」などで、
同機構では「診断や治療などの医療技術が徐々に進歩している一方で、
より質の高い療養生活を送る上で欠かすことができない部分に対する
不満が高いことが示された」としている。
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内容とタイトルがちょっとかみ合わない印象がありますが・・・

コメント欄を見ても「がんの特効薬を!」みたいな内容が並んでいますし。
「疼痛ケア」と言う概念自体がまだまだ理解されていないのでしょう。

しかして「受けたことない」が6割、と言う結果は驚きです。
もっともがんでも100%疼痛があるとも限らないので
疼痛がない人は「受けたことない」と回答するでしょう。
アンケートの質問設定と解析にちょっと疑問ありです。
「疼痛ケア」がどこまでの範囲を含んでいるかも曖昧ですし。

がんの「疼痛ケア」≒「モルヒネ製剤による除痛」と考えていいでしょう。
モルヒネ製剤以外にも使用する薬剤はあるのですが
いわゆる末期がんの疼痛にはやはりモルヒネ製剤しか効果が出ません。
このモルヒネ製剤も10年15年前と比べると本当に使いやすくなりました。
パッチ製剤なんかは3日に1回の張替えで血液濃度が維持できます。
ただ、導入の仕方にちょっとしたコツがいりますが
そんなに難しい事ではありません。
うまく導入すると劇的に効きます。

ただ、以前と変わらないのが「認識」です。
患者、そして医師双方の認識が不足している部分が大きいです。
医師でもモルヒネ製剤に関する知識不足、経験不足の人が多い。
だいたい、医師は「末期=死=敗北」と言う教育をなされているので
「末期=死」だと見切ると放棄する、逃げる習性があります。
その延長線に位置するモルヒネ製剤なんか
知る必要も使う必要もない、と言う感じでしょうか。

でも・・・頼むから「モルヒネなんて使うと中毒になる、寿命が縮む」と
患者および家族に言い放つのは止めてくれ・・・と思ったこともあります。
壮絶な疼痛で患者が転げまわっているのに
「モルヒネ使うのなんとなく怖いしどうしようもないし」
で放置している現場も見た事があります。
単なる自分の知識不足・誤解です。
自分ががんになって最後の最後まで苦痛を我慢させられたら
どうなのか、と言う想像力不足でもあります。

医療用のモルヒネ製剤で「中毒」は有り得ません。
患者に不必要な忍耐をさせるべきではありません。
使用方法が分からなければ薬剤師に相談して教えて貰うべきです。
モルヒネ製剤の形状、規格は進歩しつつ変化しています。
私も分からない面が多々あるので
かならず薬剤のプロと相談しつつ進めていきます。

患者側も以前と比べればやや受容の度合いが高まったかな・・・?
でも、本来、患者を啓蒙すべき医師のやり方に
はっきり言ってお粗末な部分が多いので
なかなかだと思います。

「麻薬」=「中毒」と言う短絡的な認識がある限り
「モルヒネによる疼痛ケア」の普及は難しい。
この図式には「麻薬」=「薬物乱用」=「中毒」と言う
もう一つのキーワード「薬物乱用」を含めて考えるべきなのですが
芸能人の薬物汚染などの影響もあり
「麻薬」→「中毒」直行認識になってしまっています。
もちろん覚せい剤やらの乱用は大問題ですが
覚せい剤と大麻と医療用モルヒネを同じ「麻薬」と
ひとくくりにしているから無用な混乱と苦痛が生まれるのです。

ちゃんと「医療用麻薬」の啓蒙をしていかないといけません。

2010年2月24日水曜日

「山本病院」問題・拘留中医師死亡

元山本病院塚本医師・拘留中に死亡

(財経新聞より抜粋引用)
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2010年2月24日
山本病院事件:医師塚本容疑者死亡、拘留中に急性腎不全悪化

 奈良県大和郡山市の医療法人雄山会「山本病院」(破産手続き中)の入院患者が肝臓の腫瘍摘出手術中に死亡した事件で業務上過失致死容疑で逮捕された元主治医塚本泰彦容疑者(54)が25日午前7時30分頃、拘置されている同県桜井市三輪の桜井署2階留置場であおむけに倒れているのを看守係が発見し、県内の病院に搬送されたが意識不明の重体で、約3時間後に死亡した。同署は死因を調べている。
 塚本容疑者は逮捕後に病院で急性腎不全という診断を受けていて、24日には脱水症状と診断され、病院で点滴と流動食を受けていた。
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やはり「明日はわが身」!!
いくら「儲かるから」と持ちかけられても
やはり不正はいけません。
この顛末・・・悲惨です・・・
捜査にも重大な影響が出るでしょう。

それでも理事長は相も変わらず容疑否認して生きている。
やはり心臓に毛がぼうぼう生えているモン勝ちなのか・・・

2010年2月12日金曜日

高齢者の注入食とは

施設で注入食を扱う事に関しての問題点論議

B施設は最近、平穏無事・・・
と、思っていたら昼前に慌てた様子の電話が・・・
「××さんのN-Gチューブが詰まりました!」
流動食を注入するのに鼻孔から胃へ留置している管ね。
まあ・・・そろそろ交換時ではあったので繰り上げて交換しても・・・
「じゃあ、○○さんも一緒にお願いしていいですか!?」
いいですよ・・・施設の送迎の御都合にあわせてどうぞ・・・・

昼の注入が出来なくなったのであわててかっ飛んできた。
交換自体は大した手技ではない。
ただ、一応、レントゲンで管の先端確認をしなくてはいけないなど
終了までそれなりの時間がかかる。
昼休みにかかってしまったので手薄。
はっきりとは言わないが休憩時間を施設の高齢者にとられたくない
と態度に出す看護師だっている。
やりにくいなぁ・・・・

処置終了、確認OKで送り出す。
遠ざかる送迎車を見送りながら改めて疑問が・・・
「あれっ?あの二人、なんでN-Gチューブなんて入っているんだ?」
私が赴任する遥か以前から注入を続けている人たちで
私はその辺の経緯を知らない。
脳梗塞後遺症なんかで食物を飲み込めない→N-Gチューブか
胃ろうから栄養剤を注入して生命を維持するしかない
そのへんの流れなのは間違いないが・・・

他の施設や病院でもよくこんな問題に行き当たる。
精神・人格は荒廃し、眠り続けるかうめき続けるか。
どう予防策をとっても繰り返す皮膚トラブルと
進行する関節の拘縮。
面会に来る家族はいないか、来ても
孫の写真なんかを周りの壁に貼って励ましたつもりでそそくさと帰る。
生きている?
これって生きていると言うのだろうか?

人口呼吸器と同じで
注入食管理もいったん導入してしまえばはずす事が出来なくなる。
はずせば「餓死」するからだ。

「体が温かくて心臓が動いていればそれでいい」
そう言い切る家族もいる。
器械に囲まれ管だらけになってもいいんだそうだ。
「一秒でも一日でも長く"生かす"のが家族の努めだし医者の仕事だ」
昔、そんな風に言われた事もある。

家庭、施設、病院。
それぞれの立場がありその時の状況がある。
だから一概に決める事は出来ないが
「その人の人生の質」を配慮しないで
機械化した環境を与え空虚な延命行為を続ける事に
もう少しは懐疑的になってもいいんじゃないかとよく思う。
そして「死んだ」のに「殺された」と文句をつける家族は
普段、ろくに見舞いにも、ましてや看護・介護にタッチしない
立場の人が多いのも事実だ・・・・

「死ぬ」前にちゃんと「生きて」きたのか?
他人にあれこれ言う前に自分がちゃんと「生きて」いる自信と確信があるか?

それが大切ではないんだろうか。

2010年2月9日火曜日

「山本病院」問題・明日はわが身!?

山本病院理事長 手術放棄して飲酒
↑新聞社のニュースのリンクが期限切れなので
ニュースをアップしたブログから拾っています
出典が曖昧で申し訳ないのですが
ニュースが早々に期限切れでどんどん読めなくなっているので・・・
他の問題でも期限がちょっと早すぎませんか?
社会的に重大な問題の割には・・・・

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奈良県大和郡山市の医療法人雄山会「山本病院」で
肝臓手術を受けた男性患者(当時51歳)が死亡した事件で、
業務上過失致死容疑で再逮捕された理事長で医師の山本文夫容疑者(52)が、
男性の容体が急変した際に病院を出て飲酒していたことが病院関係者への取材で分かった。
山本容疑者は執刀医と麻酔医を兼務していたが、連絡も取れなかったという。
県警は、山本容疑者が適切な処置を怠ったことが
死亡につながった可能性があるとみて調べている。


 山本容疑者と助手を務めた医師の塚本泰彦容疑者(54)は
06年6月16日午前10時10分ごろから手術を開始。
腫瘍(しゅよう)を摘出する際に肝静脈を損傷し、大量出血させた。
病院関係者によると、山本容疑者は傷口を縫合した段階で
手術室を出て近くの店に飲みに行ったという。
 しかし、男性は出血が止まらず、容体が急激に悪化。
午後1時半ごろから、塚本容疑者と看護師が止血したり、
赤十字血液センターから急きょ血液を取り寄せて輸血したが、心肺停止状態になった。
 塚本容疑者は男性を病室に移し、看護師や検査技師と約2時間にわたり
心臓マッサージを続けたが、午後3時39分に死亡が確認された。
この間、看護師が山本容疑者に電話で連絡しようとしたがつながらず、
夕方に戻って来たという。

 当時病院に勤務していた関係者は「手術しておきながら、
患者さんを診ないで飲みに行ったのは、医師としてあるべき態度じゃない」と話す。
両容疑者は、男性の死因を「急性心筋梗塞(こうそく)」とし、
医師法に基づく「異状死」の警察への届け出もしていなかった。
山本容疑者の行動について、捜査関係者は「容体が安定するまではいないといけないのに
出ていった。責任を果たしていない」と指摘している
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確信犯で違法手術をした挙句
放棄して飲んでいたとは・・・ここまでくると感心してしまいます。
しかもまっ昼間ですよね、この時間経過を見ると。

周りのスタッフの修羅場を想像すると・・・・ぶるぶる・・・
2時間の心臓マッサージもお寒い状況です。
いくらあわてて輸血・輸液をして心臓マッサージをしたところで
患部の止血が不十分なのだから
心拍再開するわけがない。
失血死です。

でも、はっきり言って、こういう構図(トップが下に強要して自分は逃げる)は
どこにでもある。
医療以外の分野でももちろんあるでしょう。
巻き込まれないように、押し付けられないように気をつけましょう。

また、この理事長は「生保囲い」をやっていたわけですが
他にも「高齢者囲い」「精神疾患囲い」「障害者囲い」等々・・・・
これまた同じ構図は蔓延している、と言うか普遍的なので
自分がそういう構図にはめられて搾取されていないか
よくよくチェックする必要がありますよね・・・疾病に限らず。

「理事長」で思い出したこと。
某病院であくどいゴリ押し理事長に会った事がある。
診療の内容にまで事細かくあれこれ指示してくる。
なので、てっきり医者だと思っていたら・・・・
「理事長?あ、あれ、元・医者」
「元・医者」ってなんだ!!?
と尋ねたら
「医師免許取り上げられたらしい」
・・・・って、どんだけ悪い事、しでかしたんだ!!?
かなり悪い事やっても「停止」くらいなのでは・・・・?
それ以上は怖くて確かめられなかったけれども・・・

そこはバイトだったし、あまりにあまりなので強引に辞めた。
よかった、と今でも思っている。

まあ、他の処も似たりよったりではありますがね・・・・

2010年2月1日月曜日

京大病院・入院患者から高濃度インスリン検出

入院患者から高濃度インスリン
(大阪日日新聞より抜粋引用)

2010年2月1日 11:36
 京都大病院(京都市左京区)に入院していた90代の女性の容体が急変して血液から極めて高濃度のインスリンが検出されていたことが1日、分かった。カルテにはインスリン投与の記載はなく、事件の可能性があるとして病院が京都府警川端署に届け出た。
 女性はその後回復し、退院した。
 病院や同署によると、昨年11月、循環器内科に入院していた女性の血糖値が急激に低下し、意識不明になった。病院が調べたところ、血糖値を下げるための高濃度のインスリンが検出された。
 中村孝志病院長は「病院としては、警察の捜査に全面的に協力している。捜査中であることなどを踏まえ、現時点で詳細についての公表は控える」とのコメントを発表した。
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インスリンで云々・・・の見出しで
「また・・・旦那にインスリン打って殺そうとしたのかしら」
と思い開けてびっくり。
90歳代、しかも入院中。
入院中の点滴内に混入とは念が入っています。
よほど恨みがあるのか財産が早く欲しい人がいるのか?
それとも愉快犯だったら・・・・それが一番コワイですよね。
目的、動機が全く不明です。

2010年1月17日日曜日

「新型インフル禍の真犯人 告発! 死の官僚」の自主回収

「新型インフル禍の真犯人 告発! 死の官僚」の自主回収
    (ヨミウリ・オンラインニュースより引用)

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講談社が今月刊行したばかりの単行本「新型インフル禍の真犯人 告発! 死の官僚」の自主回収を始めたことが、10日わかった。

 同社によると、同書は厚生労働省医系技官である著者・村重直子さんの話を編集部がまとめて7日に刊行。しかし、医学的に不正確な表記が多数あるなど、タイトルも含めて村重さんの本意と違うものになったため、話し合った上で9日から回収を始めた。
 同社は2月末までに村重さんの書き下ろし本を新たに刊行、すでに購入された本と無償交換するという。
(2010年1月10日20時58分 読売新聞)
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あまり買うつもりはなかったのですが
ためしにネット販売を申し込んだら普通に買えました。
回収発表のあった3日後くらいに注文したのですがね・・・
さすがに今はどこもとりあつかっていないようですが。

官僚批判・告発ならばそれ相応の対策あっての刊行かと思いきや
出版社の自主回収という腰砕け結末。

講談社のリコール画面をアップしようとしたら何回もフリーズするし
某検索エンジンから削除されているっぽいし
裏で何が動いているのでしょうか。

今回の新型インフルエンザ騒動で厚生労働省の対応のまずさ、
理念のなさにはうんざりしましたし
その辺のどたばたを時系列にまとめた辺りや
裏話はさもありなん、と思いましたね。
ただ、もう少しデータ重視、理詰めの内容を期待していたのですが。
ちょっとヒステリックに周囲をバンバン叩いている文体が目立ち
「筆者の意向とは異なってしまった」と言われればそんな気もしますが。

官僚だけが一方的に悪い、と言うスタンスはちょっと?
「官僚主義」の弊害は言わずもがなですが
殊、このインフルエンザ騒動では
日本の官僚だけを批判すれば良いと言う問題ではないはず。
ワクチン、薬剤、検査薬などの流れを世界規模で考えると
国家と企業の関係が見えてきます。

患者というか国民の認識の問題も置き去りですね、この本では。
基本の基本、衛生・隔離・安静を守ればいいだけの話なのですが
マスコミの陽動作戦に乗って踊りまくる国民性がまず問題。
著者が期待するほど民意は高くはないと思います。

村重直子氏の個人歴、思想には感銘を受けるのですが
・・・・・
現場の医者が振り回され混乱・困惑して疲弊しているのは事実。
だけども、この騒動を好機とばかりに
儲け主義に徹っする処だってありますからねえ・・・
ワクチンを大量購入して
「接種を断る患者は今後、診ない」と圧力をかけて事実上、
強制接種させる処とか。
(65歳以上で高血圧くらいの病名がつけば接種対象になる。
厚生労働省が1回打ちの2回打ちので迷走した結果、
ワクチンはだぶついているところはだぶついているので
勧められれば断りにくい年寄りに強要する。すると結構な数がこなせる。
本人のアレルギー歴、免疫力等は一切無視。
打った次の日に死んだら「因果関係は明らかではない」と言って
蓋が出来るしくみになっているので問題なし。
逆に大した病気も無いのに外来に乗り込んできて
打て!と脅迫する患者?もいるのでどっちもどっちの感あり。)

10mlのバイアルは使用期限があるので人数分での使い切りが
難しいんですが、そこはまあ、期限切れていても黙って打つとか。
命令で患者に期限切れのワクチン打たされている現場は
結構あったりして。
現場は確かに泣いているんですよ。
命令拒否で解雇だ!とか言われたら泣きながら打つしかないでしょ。

医療従事者のモラルが何のと言われても
実際、圧力かけられたりいじめられたりしてはねえ・・・
生活かかっていますし。

そんなこんなの枝葉末節部分まで大混乱のこの騒ぎ。
官僚批判だけで解決するわけではありません。