2010年4月19日月曜日

引きこもりの果て

愛知・豊川の家族5人殺傷
(毎日新聞 4/19より抜粋)
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愛知県豊川市の一家5人殺傷事件で、岩瀬高之容疑者(30)=殺人未遂容疑で逮捕=がインターネットを使用する電話回線をいったん家族に止められ、事件2日前の15日に「殺して火をつけてやる」と家族を脅していたことが一家の関係者の話で分かった。
 一家の関係者によると、殺害された岩瀬一美さんの毎月の給料は無職の長男、高之容疑者に管理されていたといい、引きこもり状態だった高之容疑者と家族のいびつな関係が浮かぶ。
次男の会社関係者や親族によると、給料を管理していたのは高之容疑者で、20万~30万円の収入から一美さんに5万円、母正子さん(58)に4万円を毎月渡し、残りを自分で使っていたという。
こうした状態について、次男は会社関係者に「父が兄に強く言えない」と話していた。一美さん自身も親族に「私が言うと(高之容疑者が)怒るんだよ」と困った様子で話していたという。
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しばらくニュースを見ていなかったら
こんな事件が起きていたのですね・・・
少し前に病院内で出くわした事例を思い出しました。

「40過ぎの長男の体調が悪い」
と両親が長男を救急車に乗せてやって来た。
見れば高度の肝不全。
・・・・何年も引きこもり+酒びたりの生活だったそうだ。

搬入された時は直接関わっていなかったのですが
病棟で「意識状態がおかしくなった」と呼ばれたので行ってみました。
腹水で腹は蛙腹。顔色・目つきがもう生きた人間のものではない。
ここに至るまで何年引きこもり生活していた、させていたんだ。
そう思いつつも一通りバイタルチェック。
血圧・呼吸は安定している。
高度の肝不全なので意識状態が不安定なのは仕方なし。
個室に入っていたのでICUに移動させた。
それが大騒動のきっかけになるなんて・・・

状態が不安定な患者を観察・対応しやすくするために
ICU、観察室に置くのは医療サイドとしては当然の処置。
ところが連絡を受けて駆けつけた両親が
「なんで個室に居ないんだ」
「どうして広いところに移したんだ」
と騒ぎ立てる・・・と言うか怯えている。
看護・加療の面からの措置だ、と説明しても
なんだかそわそわびくびくしている両親。
数分後、その訳が判明した。

意識混濁して動く体力も無いと思われていた長男が
突然、目を見開いて大暴れ!
「なんだ!!ここは!!」
「明るいじゃないか!!広いじゃないか!」
「何でこんな管(点滴)が付いているんじゃ!!」
点滴の管は抜くわ立ち上がって暴れるわ・・・
男性看護師が何人も跳ね飛ばされ
一人は逃げ遅れて首を締め上げられる有様。

かなりの量の鎮静剤を打ち込んでようやく少しはおさまったが
こういう強い興奮状態に陥ると
並みの薬量では抑えられません。

この時、両親いわく
「だから個室に入れておいてくれと言ったのに・・・・」

引きこもりを長期間していたため
広い空間、明るい処に居るのが耐えられなかった、と言うわけ。
致し方なく個室に戻ってもらった。

ここまで来ると医療の及ぶ処ではありません。

興奮と意識レベル低下を繰り返して
数日後に死亡しました。
こころなしか両親はほっとしている様にも見えました。

何らかのきっかけで引きこもりになる=社会的に活動する力が無くなる。
これはもちろん大きな問題です。
家庭内でどう対応していいか分からない。
本人の要求通りにしないと暴れる、危害を加えられる。
叱れない、是正できない。

豊川の事件では父親の給料を長男が握って
ネットで買い物三昧。
ネットを切られると暴れた・・・
なんで無職の長男に家計を抑えられるのかなぁ、と思いますが
暴力が激しくて致し方なし、だったのでしょうか。
やはりわが子が不憫でかわいそうだから
暴れられるよりはお金をあげてしまっていたのでしょうか。

私が出くわした例も同類のパターンです。
なんで無職で家から一歩も出ない・出られない人が
肝不全になるまで酒を飲み続けられるのですか?
「暴れるから」と両親がせっせと買って与えていたからです。

この様な構図の果てに病気で自分が死ぬのは
まだしも穏便な結末だったと思います。
家人を殺傷したり
もう少し外に出られる人だったら
通り魔的な事件を起こすとか
別の結末を迎える事例は多いはずです。

社会と自分、家族と自分の関係を良好に保つのは
いつの時代、どこでも難しいものです。
妥協しすぎると相手がエスカレートする。
抑えすぎると反発を招く。

・・・・・
病院での例は両親は特に何も言わずに帰って行きました。
後日談があります。
どうやら弟が居てその弟も引きこもり傾向らしく
「ネットで調べたら兄に与えられた医療行為は
間違いなのが分かったから訴訟の準備をする」
とか言っているとか言わないとか・・・。
今のところ具体的に何も起きてはいませんが。
両親の苦労は終わったわけではなさそうです。

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