2010年4月7日水曜日

画像診断の問題

CT診断を格安・中国に下請け

(Yomiuri online 4月6日より引用)
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医師不足などの影響で、患者の検査画像の診断をインターネットを利用して外部に依頼する医療機関が増えるなか、一部では格安サービスをうたい中国の医師への委託も始まっている。
 中国人医師による画像診断サービスを行っているのは「日本読影センター」(大阪府)。日本人医師によるサービスの傍ら、2008年に中国への依頼を始めた。CTなどの診断を外部に依頼した場合、日本国内では1件当たり3000円前後が相場なのに対し、700~900円で請け負う。結果は日本語に翻訳された報告書で依頼した医療機関に返送される。
吉村英明社長は「契約している中国人放射線科医は約15人おり、診断力はあらかじめテストしている。ただし、日本の医師免許はないため、『参考所見』という位置づけ」と話す。

 国内のCT、MRIの合計数は約1万7000台と、人口当たり先進国中で最も多い。一方、専門医は5000人程度にすぎない。民間調査会社矢野経済研究所によると、遠隔画像診断を利用する医療機関は昨年、1944施設と、10年で8・2倍に増えた。業者も50前後に上るとみられる。 最終更新:4月6日14時42分

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中国人医師の診断能力がどうのこうの、が問題ではありません。
まず、日本人が金にあかせて世界中の高価な画像診断機器を買い漁った事。
その結果、検査症例の質が下がりました。
つまり「ちょっとそこでCTとってもらおっか」
「友達とランチのついでにMRI撮りに寄りました」
という感覚で病院に来る層がどっと増えました。
病院も経営だからお客さんいらっしゃい。
もしくはなんでもかんでも「医療ミス!!」で訴えられるから
「とりあえず検査」「防御CT・MRI」を乱造するしかありません。

また、悲しいかな、オーダーする医者も
どの症例にCT、どの症例にMRIをオーダーするべきか
知らない人が多すぎます。
症例、検査目的によって使い分けが必要なのに
「とにかく撮っておけばいいんだ」感覚の人が実に多い。
現場の指導医がそう教えている場面にも何度も出くわしました。

検査の交通整理、レポート作成をしているのが
放射線診断・読影医、専門医なのです。
華々しい存在ではありませんが
専門医は全国で約5000人ですか・・・・
「なんでもかんでもCT・MRI!!」に対応出来る数ではありません。
オーダー医とデスカッションしながら検査を進めていくべきなのに
ルーチン的、ドック的、訴訟防御的検査を
どんどん積み上げられてはとても対応できません。

かくして「遠隔・外部依頼」の事業が成り立ちます。
遠隔画像診断は症例検討のため各病院をつなぐ
重要な意味のあるシステムです。
そこまでは認めるのですが・・・・

中国に下請けまで出して「参考所見」が欲しいのですか?
まずはタミフルと同じ図式で
海外のメーカーに言われるがまま商品を買いあさり
「それがなしでは成り立たない」社会構造にはめ込まれる
日本人の意識を問題視するべきです。
後先考えずに器械だけをそろえて検査を乱発し
検査の解析が追いつかないアンバランスさをまず是正するべきです。
そして「参考所見」程度でよいのならば
お医者さん、各自で少し勉強してください。
「いや、やはり専門医に見てもらわないと
何かあった時に責任が・・・・」
と思われるのならば国内の専門医と情報交換、デスカッションを
しっかり構築するべきです。

さらに指摘すればこの下請け外部依頼は診療報酬詐欺に使えます。
国内の放射線科常勤医が読影すれば
条件にもよりますが「読影診断料」を請求出来ます。
国内で読影したように見せかけて下請けに出せば
その差額はかなり大きいです。
こういう構図を頭に描いた経営者は少なくないと思います。
調べられればいずればれますが
なにせ検査数が膨大なものなので
厚労省も手が回らないでしょう。

私も某病院で読影専門医として従事している契約なのですが
「人手不足」を理由にいろいろおかしな事を要求されます。
私の名前を使って勝手にレポートを作成する事を
黙認しろ、と脅しに近い圧力をかけられた事もあります。
経営者にとってはレポートの内容・質などどうでも良いのだな、
レポートの枚数イコール札束に見えるんだな・・・・

とにかく「中国に下請け」は
製造業が国内の空洞化を招いた構図と同じで
かつ国内での不正を招きかねない流れだと言っておきます。

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