2010年4月14日水曜日

家と病院の狭間で

先日の往診、大荒れ・・・

定時往診の件数は少ない。
天候は悪い。
さっさと片付けて内勤業務に励むべし・・・
と段度っていたがそうはいかなかった。

まずは訪問看護ステーションから連絡が入る。
97歳のお婆ぁが脱水起こして入院。
家に帰りたがるので退院。
しかし「ご飯が食べられない」との事で自宅で点滴。
・・・・よくある話なのですが
この「ご飯が食べられない」がかなりくせもの。
家人・介護者は「朝・昼・晩3回の主食・副食を全量摂取」
しないと「食べられない」「食事が取れない」「死んでしまう!」
と訴えがち。
・・・・ほぼ寝たきりでご高齢で1日3回きっちり食べられる
そういう事はありえないのですがねぇ・・・・
周りが自分の年齢、活動性のものさしで
与えてしまい食べた食べられないを判断して
「点滴!」「入院!」「流動食!」と騒いでいる事も多いのです。

まぁ、それはともかく・・・・
そのお婆ぁはジュースや饅頭をぼちぼちとっている様子。
「それで良いんですよ」
と言うと介護者がようやく納得します。
「3度の食事をとらない」→「介護の仕方が悪いからとらない」
→「自分が責められる」
と言う思考回路、防衛意識が働くみたいですねぇ・・・

点滴に入った訪問看護師があわてて連絡をしてきたのは
本日になって急激に熱発してきたからです。
定時往診の合間に差し込んで行ってみます。
肘がパンパンに腫れていて動かすと痛がります。
・・・・
よく聞くと「3日前から痛がっていた」との事。
うーん・・・

関節炎は関節炎です。
細菌性のものだとしてもどこから感染するのか?
膠原病的な要素はないし・・・
高齢者に限らずどうも説明がいかない
単関節の炎症と言う現象に良く出くわします。
まあ、専門の病院・医者に見てもらったら
なにかしらの原因・病名は分かるのでしょうが。

念のため採血をかけると
「・・・思っている以上にCRP(炎症反応)高いじゃないの・・・」
家人に電話連絡。
先日の入院の前には
「家で最後まで看取るのか、入院させるのか」
と家人判断を迫ってみました。
その時は「なるべく長く家で看たい」と言ったのですが
次の日の朝に「入院させてくれ」
・・・「なるべく長く」が半日かいな・・・・
考え・態度がころころ変わる家なのでこっちも用心。
今回は訪問看護で施行している点滴に
抗生剤を追加する事で皆さん納得。

「あそこは行くたびに態度が変わる」
訪問看護の人にちょっとぼやいてしまいました。
「どうも、事あるごとに親族会議を開いていて
そこで出した意見がしょっちゅうブレるみたいですよ」
・・・・なるほど・・・・

本人が入院を嫌がっていたところで
家人・親族が決めてしまえば
家には居られません。

ようやく病院に帰ってきたら・・・
「○○さんが退院して入院しました!!」
「・・・・????何・・・・・?」

95歳のお爺ぃがちょっと遠くの病院の整形外科に入院していた。
数年前に手術した股関節の部分から
金属がはみだしている、との事で連絡があったのだが
あいにくその日は私も整形外科医も不在。
別病院に行ってしまって
「どうなったのかなぁ・・・」
と気にはしていた人なのですが。

「向こうの病院の整形外科を退院させられたが
家に帰る途中、あまりにも状態が悪いので
うちに寄ったら入院」

むこうの整形外科さんは股関節の部分だけを見て
「金属は押し込んだし皮膚表面の傷も治ったから
整形外科は退院」
とした様子。
まぁ、確かに局所だけ見ればおっしゃる通りなのですがね。
しかしてお爺ぃを見れば
全身むくみ倒して意識はほとんどないわ両手の皮膚はずるむけだわ
ぜこぜこひゅーひゅーと喘いでいるわ・・・
聞けば3日前からこっちは本当に食事も水分も採れていないとの事。
おーい・・・心不全、脱水、肺炎ですよぉ・・・・
どんな一般人が見ても状態が普通ではないのはわかりますよぉ・・・

「家で看取るのだ」と言う方針があって帰すのならばまだしも
「もう整形でやる事ないから退院」で
全身状態の悪い人を追い出すのはひどいでしょ。
それが95歳で重度痴呆の人でもです。
確かに整形の患者さんではなくなっていますが
内科医に相談するとかせめてこっちに連絡してくれるとか・・・

本当に股関節しか見ていなかったのか
「あ、状態悪くて死にそうだし面倒だから退院させちゃえ」
と思ったのか・・・
両方か・・・

家と病院の狭間で患者も家族も彷徨っています。
医者もトラブルを避けたいのと
いわゆるプライマリケア技術の不足で
お互いに押し付け合いになって消耗しています。

0 件のコメント:

コメントを投稿